洩矢神社

洩矢神社の概要

洩矢神社（もりやじんじゃ）は、長野県岡谷市川岸東橋原地区に位置する神社です。かつては村社として地域の人々に親しまれていました。この神社の最大の特徴は、諏訪地方の伝承に登場する洩矢神（もりやのかみ）を祭神としている点です。創建時期は明らかではありませんが、古くからこの地に存在し、地域の人々の信仰を集めてきたと考えられます。

現在の社地は天竜川から少し離れた場所にありますが、元々は川のほとりに位置していたと伝えられています。神社の周辺には縄文時代の遺跡が複数確認されており、この地が古くから人々の生活の場であったことがうかがえます。特に神社の西南にある経塚原遺跡は、かつて洩矢神の住居跡であると信じられていたこともありました。

祭神について

洩矢神は、この地域の産土神（うぶすながみ）として崇められています。また、諏訪大社上社に仕えた守矢氏の遠い祖先であるとも言われています。諏訪地方に伝わる神話によれば、洩矢神は諏訪に侵入しようとした建御名方神（たけみなかたのかみ、諏訪明神）と争いましたが、敗れて降伏したとされています。その後、建御名方神に仕える身となり、守矢氏の始祖となったと伝えられています。

中世の文献では、諏訪明神と洩矢神が戦った場所は守屋山の麓（諏訪大社上社本宮周辺）とされていますが、江戸時代の記録には、天竜川のほとりが戦場であったとする異伝も残っています。現在では、洩矢神社と三沢地区にある藤島神社が、この二柱の神の陣地跡であると考えられています。

また、洩矢神社は元々、現在の岡谷市湊（旧花岡村）に鎮座しており、花岡村から橋原村へ移住した花岡氏と共にこの地に移されたという説もあります。

天竜川と藤の伝説

洩矢神社には、天竜川にまつわる興味深い伝説が残されています。かつて、神社が川のほとりにあった頃、境内の藤の木が対岸の藤島神社の藤の木と絡み合い、大きな橋のように見えたと言われています。寛文年間（1661年～1673年）には、諏訪藩主が天竜川での蛍狩り遊覧のためにこの藤を伐採するように命じましたが、人々は神の祟りを恐れて誰も手をつけようとしませんでした。

そんな中、新屋敷の小石嘉右衛門という人物が、山役の報酬を条件に藤の伐採を引き受けました。しかし、間もなく彼は精神を病んでしまい、京都の吉田家で祈祷を受けるも、ある日、祈祷の札を頭に乗せたまま家を飛び出し、山中で亡くなってしまいました。人々はこれを神罰だと恐れ、彼の亡くなった場所に神札を祀り、「鎮目大明神」と名付けました。

また、この命令を出した藩主にも祟りがあったため、お詫びとして城内に祠を作って奉納することにしましたが、あまりにも大きすぎたため、少し縮めて奉納したと伝えられています。現在の本殿は、この時に建てられたものだとされています。この際、神社は現在の場所に移され、藩主は神事免を寄付したと伝えられています。それ以来、洩矢神社は諏訪藩主から篤く崇敬され、明治維新の廃藩置県まで例祭は藩主によって執り行われていました。

神徳と祭事

洩矢神社は、霊験あらたかな神として知られています。特に、安産にご利益があるとされ、安産を願う女性が底抜けの柄杓を奉納する風習があります。

神社では、年間を通して様々な祭事が行われています。主な祭事としては、元始祭、除蝗祭、例祭（10月第3日曜日）、二年参り（12月31日）、御柱祭（寅年・申年）などがあります。御柱祭は、古くは諏訪大社下社の御柱祭と同日に行われていましたが、近年では異なる日に行われています。洩矢神社は諏訪大社との関わりが深く、大社で使用される織旗と同じ太さのものが許可されています。

アクセス

洩矢神社へのアクセスは以下の通りです。

JR東日本中央本線岡谷駅から徒歩約15分（約1.1km）
シルキーバス川岸橋原線「洩矢社前」バス停から徒歩1分