藤島神社 (諏訪地方)

長野県諏訪地方の藤島神社：建御名方神と深く関わる二つの社

長野県諏訪地方には、「藤島神社」と名付けられた二つの神社が存在します。どちらも、諏訪地方に伝わる建御名方神（たけみなかたのかみ）の降臨に関する伝承と密接に結びついており、共通の由緒を持つことから、本稿では両社をまとめて紹介します。

1. 諏訪市藤島社：諏訪大社上社の摂社

諏訪市にある藤島社は、諏訪大社上社の摂社であり、「中十三所」と呼ばれる摂末社の筆頭格です。上社本宮から北へ約500mの位置に鎮座しています。

この神社の起源は、建御名方神が諏訪地方に到来し、国津神である洩矢神（もりやのかみ）と争ったという神話に遡ります。神話は『諏訪信重解状』（宝治3年、1249年）や『諏方大明神画詞』（延文元年、1356年）などに記されており、建御名方神が藤を用いて洩矢神を降伏させた後、その藤を地に植えた（あるいは投げ捨てた）ところ、たちまち繁茂し、藤の木となったという逸話です。『諏方大明神画詞』では、この伝承が藤島社の由来とされています。

近年、地区の区画整理事業に伴い、藤島社は元の場所から中央自動車道の東南下方に移転されました。

主な祭神は木花開耶比売命（このはなさくやひめのみこと）と、藤島明神（建御名方神）です。また、『諏訪上社物忌令之事』（嘉禎4年、1238年）には、藤島大明神の本地仏として不動明王が記されています。

6月初旬に行われる御田植祭は有名で、神社隣の神田（御作田）で執り行われます。この神田で神事として植えられた稲は、一ヶ月後には成熟し、神前に供えられたことから「御作田の早稲」として諏訪大社の七不思議の一つに数えられています。『諏方大明神画詞』では6月晦日に行われていたと記されていますが、現在は6月の第一日曜日に執り行われています。中世には、御田植祭の前三天間に御作田御狩が行われ、狩猟された動物が生贄として藤島社前に奉納され、田植え終了後には夏越の祓いが行われていました。

2. 岡谷市藤島神社：古墳の上に鎮座する社

岡谷市川岸上三沢区（旧三沢村）にある藤島神社は、県道14号沿いに位置し、石室を持つ円墳である荒神塚古墳の跡地に鎮座しています。この古墳は、諏訪地方では珍しい平地、しかも水辺にある古墳であり、6世紀～7世紀初頭の築造と推定されています。その立地から、天竜川の源流という交通の要衝を支配した有力者の墓と考えられています。

後世には「陵明神」や「十五所明神」と呼ばれ、後に三宝荒神が合祀されて「荒神塚」と呼ばれるようになりました。中世の文献では、建御名方神と洩矢神の争いは守屋山の麓とされていますが、江戸時代の伝承では天竜川のほとりを戦場とする異説も存在し、この伝承において三沢村の荒神塚が藤島社として位置づけられています。

言い伝えによると、かつては藤島神社の対岸に洩矢神社があり、両社の藤が絡み合い、天竜川を覆っていたとされます。しかし、人夫が藩主の命令でこの藤を伐採したところ、狂死したという話が残っています。

明治14年（1881年）に初めて発掘調査が行われ、その後も何度か調査が行われています。祭神は藤島明神（建御名方神）と三宝荒神（夜辺荒神、忿怒荒神、三島荒神）です。例祭は3月の第二日曜日に行われ、神社委員会によって執り行われます。JR岡谷駅から約15分（約1.3km）の距離にあります。

まとめ

諏訪地方の二つの藤島神社は、建御名方神を祀る神社として、地域の歴史・文化と深く結びついた重要な存在です。それぞれの神社に伝わる独自の伝承や祭事を通して、古代から現代まで続く信仰の深さを感じることができます。両神社を訪れることで、諏訪地方の歴史と神話のロマンに触れることができるでしょう。

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