小野神社・矢彦神社

小野神社・矢彦神社について

長野県に位置する小野神社と矢彦神社は、かつては一つの神社であったと伝えられていますが、現在はそれぞれ別の神社として鎮座しています。

小野神社は長野県塩尻市に、矢彦神社は長野県上[[伊那郡]]辰野町に位置し、両社は同じ社叢に隣接して鎮座しています。小野神社は信濃国二宮として知られ、両社とも旧社格は県社です。

祭神

小野神社

建御名方命 （たけみなかたのみこと）

矢彦神社

正殿
大己貴命 （おおなむちのみこと：大国主命）
事代主命 （ことしろぬしのみこと）
副殿
建御名方命 （たけみなかたのみこと）
八坂刀売命 （やさかとめのみこと）
南殿
天香語山命 （あめのかごやまのみこと）
熟穂屋姫命 （うましほやひめのみこと）
北殿
神倭磐余彦天皇 （かむやまといわれひこのすめらみこと：初代神武天皇）
誉田別天皇 （ほんだわけのすめらみこと：第15代応神天皇）

歴史

創建

創建年代は不詳ですが、伝承によれば、建御名方命が諏訪に入ろうとした際に、先にいた洩矢神によって阻まれ、この小野の地に留まったとされています。また、矢彦神社の社伝では、大己貴命が国造りの際に、御子の事代主命・建御名方命を伴いこの地に立ち寄ったと伝えられています。

欽明天皇年間（539年-571年?）に、大己貴命と事代主命を正殿に、建御名方命と八坂刀売命を副殿に祀り、祭祀の形が整ったとされています。当地が古くから交通の要衝であったこと、社宝の神代鉾・鉄鐸・御正体があることなどから、古い時期から祀られた神社であると考えられています。

概史

国史や神名帳などの文献には、小野神社・矢彦神社に関する記載は見当たりません。神名の初出は、諏訪大社上社の『祝詞段』（1237年成立）にある「小野ワヤヒコ北方南方末若宮大明神」の文言です。また、永禄10年（1567年）の文書には「小野南北大明神」とあり、信濃国の二宮として崇敬されていたとも言われています。天正7年（1579年）の記録には「小野二之宮造営」という記述も見られます。

かつては一つの神社であった両社ですが、小野盆地における領地争いを経て、天正19年（1591年）に豊臣秀吉の裁定により、唐沢川を境に分割されました。江戸時代後期には両社とも天領となり、小野神社・矢彦神社とも境内は北小野の地籍でしたが、矢彦神社が南小野の氏神となり、その境内は南小野の飛地という扱いになりました。この状態は現在まで続いています。門前町は、初期中山道、三州街道（伊那街道）の宿場町である小野宿として栄えました。

明治時代に入り、両社とも近代社格制度において県社に列せられました。

境内

社叢

両社が鎮座する小野盆地は、「頼母の里」または「憑の里」と呼ばれ、『枕草子』や『夫木和歌抄』にもその名が記され、都人にも知られた地でした。このことに由来して、現在でも両社の例祭は「田ノ実祭」「憑祭」と称されています。また、小野盆地は信濃28牧の一つ、小野牧があったことでも知られています。

両社の境内は同一の社叢内にあり、北に小野神社、南に矢彦神社が位置しています。社叢は針葉樹と広葉樹が混ざった混交林で、約150種もの樹木が生い茂っています。社叢の面積は36,326平方メートルで、巨木も多く、この地域の天然林を代表する景観として、「矢彦小野神社社叢」として長野県指定天然記念物に指定されています。

小野駅前には、両社共通の大鳥居が建てられています。

小野神社

小野神社の社殿は、寛文12年（1672年）の焼失後、松本藩主の水野忠直によって再建されました。本殿2棟と八幡宮本殿が南から並列し、勅使殿がその前方中央に位置します。本殿が2棟あるのは、御柱祭の際に遷座するためです。いずれの社殿も現在は銅板葺ですが、古くは柿葺でした。これらの社殿は長野県宝に指定されています。

2018年の台風で本殿のうち1棟が倒木により大破する被害を受けました。

矢彦神社

矢彦神社の祭神を祀る正殿・副殿・北殿・南殿は、同一の形式・規模で一直線上に並んでいます。拝殿と左右の回廊は天明2年（1782年）の造営、神楽殿は天保13年（1842年）の造営で、いずれも立川流の建築様式を代表するものです。勅使殿は江戸時代の造営ですが、室町時代の様式を残しています。これらの社殿も長野県宝に指定されています。

摂末社

小野神社

八幡宮
稲荷社
子安社
宗像社
天神社

矢彦神社

明治宮 - 祭神：明治天皇

祭事

式年御柱大祭 （6年に1度、卯年と酉年の5月）
諏訪大社の御柱祭の翌年に行われ、両社合同で行われます。伝承では、坂上田村麻呂の戦勝祈願が叶ったことから始まったとされています。両社とも近隣の山林から御柱を伐り出し、境内まで引きます。諏訪大社の勇壮さに対し、小野神社・矢彦神社の御柱祭は、きらびやかな衣装が特徴で、「人を見るなら諏訪御柱、綺羅を見るなら小野御柱」と称されます。この祭りは塩尻市指定無形民俗文化財に指定されています。
小野神社ねんじり棒祭 （1月6日）
豊年祈年祭で「御田作祭」とも呼ばれます。集団的な年占いで、平安時代に遡るともいわれています。7本の固い棒を各自の耕地へ入れようと競い合う祭りで、全国的に珍しい祭事として塩尻市指定無形民俗文化財に指定されています。
例大祭（八朔祭/田ノ実祭/憑祭） （10月第1日曜）
両社合同で行われる例祭です。古くは旧暦8月1日に行われていたことから「八朔祭」とも呼ばれます。水陸様々な供え物を供え儀式が行われ、豊作感謝の祭として知られています。

文化財

長野県指定文化財

長野県宝（有形文化財）
小野神社 4棟（建造物）
矢彦神社 5棟（建造物）
銅造千手観音坐像御正体残闕（工芸品）
天然記念物
矢彦小野神社社叢

塩尻市指定文化財

有形文化財
小野神社の鐸鉾（さなぎほこ）（神代鉾）
小野神社の梵鐘
無形民俗文化財
小野神社ねんじり棒祭
小野神社御柱祭り

現地情報

所在地

小野神社：長野県塩尻市北小野175-1
矢彦神社：長野県上[[伊那郡]]辰野町大字小野3267

付属施設

小野神社資料館 - 神宝等を展示しています。開館時間は例大祭2日間の午前10時から午後4時です。

交通アクセス

鉄道：東日本旅客鉄道（JR東日本）中央本線（辰野支線） 小野駅 （徒歩約11分）

周辺

小野宿 - 初期中山道、三州街道（伊那街道）の宿場町。
* しだれ栗森林公園 - 国の天然記念物「小野のシダレグリ自生地」。

小野神社と矢彦神社は、その歴史、文化、そして自然が織りなす魅力的な場所です。訪れる人々に、歴史の重みと自然の美しさを感じさせてくれるでしょう。

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