浅井敬壹

浅井敬壹（あさい けいいち）は、1939年10月24日生まれの日本の合唱指揮者です。血液型はB型で、日本合唱指揮者協会の相談役を務めています。2006年から2014年まで全日本合唱連盟の理事長を務め、現在は名誉会長として日本の合唱界に貢献しています。

生い立ちと合唱との出会い

浅井は2歳から8歳までを、現在の中国吉林省にあたる満州国で過ごしました。終戦後に日本へ引き揚げ、その後は京都府京都市で育ちます。京都市立堀川高等学校を経て同志社大学法学部を卒業。大学在学中は同志社グリークラブに所属し、学生指揮者を務めていました。

大学卒業後は民間企業に勤務していましたが、1963年、ロシアから来日したインスブルック合唱団の演奏会を聴き、そのレベルの高さに感銘を受けます。その時、「千年の古都・京都に世界一の合唱団を」という理想を抱き、合唱団京都エコーを設立しました。浅井自身によると、将軍塚から京の町を見下ろしてその決意を誓ったといいます。

合唱指揮者としての輝かしい実績

合唱団京都エコーを率いて、全日本合唱コンクールで1980年から1999年まで、20年連続で金賞を受賞するという偉業を成し遂げました。また、住友金属混声合唱団（現在の日本製鉄混声合唱団）も、浅井の指揮のもと13年連続で金賞を受賞しています。

勤務先の定年退職を機に合唱指揮者として独立。古希を過ぎた現在も、合唱団京都エコー、日本製鉄混声合唱団など、多くの合唱団で指揮・指導を行うほか、各種講習会での講師、コンクールの審査員など、精力的に活動しています。2013年には長井賞を受賞、2015年春には藍綬褒章を受章しています。

音楽への情熱と平和への願い

浅井が師と仰ぐのは、指揮者の福永陽一郎と歌手の美空ひばりです。福永からは同志社大学時代に指揮者としての在り方を学びました。美空ひばりについては、ひばりのバックコーラスを務めた際に日本語の歌が持つ気高さに感銘を受け、自身が日本語の曲を演奏する際に「ひばりさんならどう歌うだろうか」と自問するようになったそうです。

「京都エコーを十年で世界一に」という目標を掲げていましたが、実際に全日本合唱コンクールで日本一になったのは13年目の1975年でした。その後、コンクールでは日本一に届かない時期が続き、合唱団の方向転換を迫られます。その中で、皆川達夫や日下部吉彦から「知られざる名曲をたずねて」という合唱連続演奏会を紹介され、合唱におけるビブラートやハーモニーの基礎を学び直しました。この経験から、1980年のコンクールではピツェッティの「レクイエム」を自由曲に取り上げ、金賞を受賞。これが20年連続金賞の始まりとなります。この経験を通して、浅井は「いい声で歌いまくっていればいいというようなやり方では、コーラスは全くダメだ」ということを学びました。

浅井は「100人の合唱団を指揮するときは、100対1ではなく1対1が100人分あるのだ」と語り、合唱指揮は一人ひとりの合唱団員との真剣勝負であることを強調しています。一方で、その指揮スタイルは「アインザッツ（歌い始め）がわからない」「打点がない」などと評されることもあります。

幼少期に満州で戦中戦後の混乱期を過ごしたことから、平和に対する思いが強く、合唱音楽を通して世界平和を願うことをライフワークの一つとしています。全日本合唱連盟の理事長就任時には、「戦争は絶対におこしてはならない。戦争体験を語り継ぎ、合唱を通して世界平和を願うことは、戦争体験者として生き残った私に課せられた使命であると思っている。」と語っています。


浅井敬壹は、その情熱的な指導と平和への強い願いを通して、日本の合唱界に多大な貢献をしています。

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