浅沼信爾

浅沼信爾（あさぬま しんじ、1938年 - ）は、日本の経済学者、国際公務員です。三重県伊勢市に生まれ、一橋大学経済学部を卒業後、東京銀行（現三菱UFJ銀行）に入行しました。大学では、アルバート・O・ハーシュマンの不均衡成長論を研究しました。

1964年、世界銀行のヤング・プロフェッショナル・プログラム（YPP）に日本人として初めて参加しました。当時、世界銀行の日本人スタッフは大蔵省からの出向者1名のみという状況下での快挙でした。世界銀行では、経済局、極東局、プロジェクト局農業部でエコノミストとして活躍し、ハーシュマンのインドでのプロジェクトにも携わりました。また、GHQで農地改革を担当したウィリアム・ギルマーティンや、農協設立に尽力したシーク・タカハシに師事し、カントリー・エコノミストとしての経験を積みました。

1966年から1973年まで、東アジア局のエコノミストとしてマレーシア、シンガポール、韓国などを担当し、入行5年目にはマレーシア経済調査団のミッション・チーフを務めました。その後、ウォール・ストリートに転身し、クーン・ローブ投資銀行極東代表事務所の代表を経て、1984年に世界銀行計画・予算局長に就任しました。1987年から1991年までは、世界銀行アジア第1局長として、バングラデシュ、ブータン、ネパール、スリランカなどの国々を担当しました。世界銀行退任後は、S.G.ウォーバーグ（現UBS銀行）の取締役兼ウォーバーグ証券東京支店長などを歴任しました。

また、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻アジア公共政策プログラム教授としても教鞭を執り、大学の同期である石弘光氏が設立した国際・公共政策大学院アジア公共政策プログラムの拡充に、開発関係のネットワークを駆使して貢献しました。

1998年には国際開発研究者協会の会長に就任しました。アジア通貨危機では、白石隆京都大学教授、伊藤隆敏東京大学教授らと共にインドネシア経済政策支援プロジェクトに参加し、経済破綻を回避するための助言を行いました。

著書には、『国際開発援助 : その経済的側面』（1974年）、『アジア危機を考える : 二十一世紀型の国際金融』（1999年）、『近代経済成長を求めて : 開発経済学への招待』（2007年、小浜裕久氏と共著）、『途上国の旅:開発政策のナラティブ』（2013年、小浜裕久氏と共著）、『ODAの終焉』（2017年、小浜裕久氏と共著）、『幕末開港と日本の近代経済成長』（2021年、小浜裕久氏と共著）などがあります。また、ピーター・マッコーリー著『アジアはいかに発展したか : アジア開発銀行がともに歩んだ50年』（2018年、小浜裕久氏と共同監訳）、ジェフリー・E・ガーテン著『ブレトンウッズ体制の終焉 : キャンプ・デービッドの3日間』（2022年、小浜裕久氏と共同監訳）の監訳も手掛けています。

浅沼信爾は、経済学者、国際公務員として、世界銀行や投資銀行で要職を歴任し、アジア経済の発展に多大な貢献を果たしました。また、教育者としても後進の育成に尽力し、開発経済学の分野で重要な役割を担った人物として知られています。

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