石弘光

石弘光（いし ひろみつ）：日本の財政学を牽引した経済学者

石弘光は、1937年4月9日に東京府（現在の東京都）で生まれ、2018年8月25日に膵臓がんで亡くなるまでの生涯を、経済学者として、また教育者として社会に貢献しました。彼の専門は財政学であり、特に税制や財政政策に関する研究で高い評価を受けています。

生い立ちと学歴

石弘光は、教育者の父、石三次郎のもとで育ちました。弟には環境ジャーナリストの石弘之、医師の石和久がいます。一橋大学経済学部を卒業後、同大学大学院で経済学研究科修士課程を修了。1977年には、一橋大学から経済学博士号を授与されました。博士論文は「財政構造の安定効果 : ビルトイン・スタビライザーの分析」です。木村元一ゼミに所属し、同期には元長銀総合研究所社長の平尾光司がいました。

研究と教育活動

一橋大学では、助手、講師、助教授を経て教授に就任。1998年から2004年まで学長を務めました。また、放送大学の学長も務め、教育分野での貢献も多大です。学長時代には、アジア公共政策プログラムを設立し、アジア各国の財政関係省庁職員への教育体制を整備しました。その他、オックスフォード大学をはじめとする海外の大学で客員教授を務め、国際的な研究活動を展開しました。

社会活動

石弘光は、政府税制調査会会長、国立大学協会副会長など数々の公職を歴任しました。特に政府税制調査会会長時代には、いわゆる「サラリーマン増税」案をまとめましたが、その一方で無報酬を貫く姿勢を示しました。日本郵政の社外取締役監査委員長や行政刷新会議の評価者も務めました。

税制改革への提言

租税負担の不公平を分析し、税制改革の必要性を強く主張しました。著作『財政改革の論理』では、その功績が認められサントリー学芸賞を受賞しています。また、『税制のリストラクチャリング』や『税金の論理』など、多数の著書を通じて、税制のあり方について幅広い議論を呼び起こしました。租税に関する著書としては、『租税政策の効果』や『税制ウォッチング』などがあります。

四大学連合の設立

1999年には、日独学長会議で中嶋嶺雄（東京外国語大学学長）、内藤喜之（東京工業大学学長）と偶然出会い、四大学連合の設立につながる議論を交わしました。これは、大学間の連携を促進し、教育・研究の質を高める上で重要な一歩となりました。

晩年と死

2016年に膵臓がんが発覚した後も、治療を受けながら研究活動や趣味を続けました。日本経済新聞には闘病記を連載し、多くの人々に勇気を与えました。2018年8月25日、膵臓がんのため81歳で逝去。如水会館でのお別れの会には、小泉純一郎元内閣総理大臣や黒田東彦日本銀行総裁など、多くの著名人が参列しました。

門下生

石弘光のゼミからは、蓼沼宏一（一橋大学長）、油井雄二（学校法人成城学園長）など、多くの有能な人材が輩出されました。これらの人々は、教育、経済、行政など、さまざまな分野で活躍しています。

主な著書

石弘光は、生涯を通じて数多くの著書を執筆しました。主な著書には、『財政構造の安定効果』、『租税政策の効果』、『ケインズ政策の功罪』、『財政改革の論理』、『税制改革をどう進めるか』、『環境税とは何か』などがあります。これらの著作は、財政学や税制に関する理解を深める上で重要な資料となっています。また、『癌を追って ある貴重な闘病体験』では、自身の闘病生活を率直に綴り、多くの読者に感動を与えました。

受賞歴

その功績から、毎日エコノミスト賞、日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞など、数々の賞を受賞しました。2012年には瑞宝大綬章を受章しています。

まとめ

石弘光は、財政学の発展に大きく貢献し、教育者、研究者、政策立案者として、幅広い分野で社会に貢献した人物でした。その学問的業績と社会的な影響は大きく、日本の財政学史にその名を刻む偉大な経済学者として、今後も語り継がれるでしょう。

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