浅野千鶴子

浅野千鶴子（1904年3月22日 - 1991年3月3日）は、高知県高知市出身の日本の声楽家（ソプラノ）であり、音楽教育者としても多大な貢献をしました。東京音楽学校（現・東京藝術大学）で声楽を学び、卒業後は同校の研究科を修了。永井郁子に師事し、マルガレーテ・ネトケ＝レーヴェや長坂好子からも指導を受けました。1920年代から文化学院で教鞭をとり、1929年には京城（現ソウル）での「山田耕筰作品発表会」に出演、山田耕筰自身のピアノ伴奏で歌声を披露しました。1930年には東京でリサイタルデビューを果たし、1935年には東京音楽学校定期演奏会でバッハの『聖母讃歌』のソリストを務めるなど、その実力は高く評価されました。

1937年から1940年までイタリアに留学し、帰国後は日本歌曲やフランス歌曲の普及に尽力。1942年には日本青年館で独唱会を開催。1948年には札幌でドビュッシー三十年記念「フランス歌曲独唱会」に出演するなど、精力的に演奏活動を行いました。また、同年の毎日ホールでの中田喜直作品発表会では、『六つの子供の歌』を歌い、当時44歳ながら東京音楽学校教授として声楽界で確固たる地位を築いていました。

教育者としては、東京音楽学校で講師、助教授を経て1944年に教授に就任。退職後には東京藝術大学名誉教授となりました。さらに、愛知県立芸術大学、フェリス女学院短期大学、東京純心女子短期大学でも教鞭をとり、後進の育成に力を注ぎました。特に、伊藤京子を育てたことは特筆すべき功績であり、他にも常森寿子、松島詩子、安西愛子など、数多くの優れた声楽家を輩出しました。

浅野千鶴子の功績は、1974年の勲三等宝冠章受章にも表れています。著書としては、『フォーレ歌曲集』の解説を鈴木重教と共著で執筆しています。また、多くのSPレコードが残されており、その歌声は現在でも聴くことができます。

主なディスコグラフィーには、「千草の花」（二重唱）、「かもめ」（独唱）、「皇后陛下御誕辰奉祝歌（二）」（独唱）、「大陸の黎明」（交響詩）などがあります。また、山田耕筰の歌曲集やドビュッシーの歌曲集、イタリア歌曲集など、幅広いジャンルの作品を録音しています。

1991年3月3日、86歳で逝去しましたが、彼女の音楽への情熱と教育への貢献は、今もなお多くの人々に感銘を与え続けています。浅野千鶴子は、日本の声楽界における重要な人物の一人として、その名を歴史に刻んでいます。

主な門下生は以下の通りです。
伊藤京子
常森寿子
松島詩子
安西愛子
岩本直子
中屋早紀子
山田暢
後藤基裕
伊崎燁子
木村賀洋子
山本洋子
竹村靖子
市川倫子
長谷川眞弓
関定子
北村さおり

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