浜井識安

浜井識安：空手家と実業家の波乱万丈な生涯

浜井識安氏（1954年～2023年）は、空手家として、そして経営コンサルタントとして、多岐にわたる才能を発揮した稀有な人物でした。石川県七尾市出身の彼は、幼少期から武道に親しみ、柔道の茶帯を取得。その後、石川県立七尾高等学校在学中に松濤館流空手を始め、一橋大学法学部入学と同時に極真会館本部道場に入門しました。

大学在学中、彼は前年度全日本チャンピオンである佐藤勝昭氏と組手を経験します。この時の出来事が、浜井氏の空手人生に大きな影響を与えました。初期には先輩からの厳しい指導を受けながらも、持ち前の才能と努力で、第5回オープントーナメント全日本空手道選手権大会6位、第9回全日本選手権4位という輝かしい成績を収めます。得意技は前蹴りと後ろ蹴りで、独自の戦術を駆使した組手は多くの注目を集めました。

しかし、浜井氏のキャリアは空手だけに留まりません。弁護士を志望するも、家業の紳士服店を継ぐために大学を休学、後に商学部へ転部して会計学を学びました。両親の離婚を機に家業を継承するも、その傍らで極真空手の道場を開設。七尾市から東京都国立市まで通いながら、一橋大学商学部を卒業するという並外れた努力と情熱を見せます。

1977年に黒帯を取得し石川県支部長に就任。空手ブームの中で多くの弟子を育成し、極真空手の名伯楽と呼ばれました。同時に、彼はレンタルビデオ業に参入。株式会社ビデオシティ（後の株式会社ゲオシティ）を起起業し、北陸地方のレンタルビデオ業界で大きな成功を収めます。その後も、株式会社エスポコミュニケーションズへのヘッドハンティングやゲオ営業本部長への就任など、ビジネスシーンでもその才能を開花させました。2004年には、ビデオシティを株式会社ゲオに売却し、実業家としてのキャリアに幕を閉じます。

経営者としての成功を収めた後も、浜井氏は空手の道を歩み続けます。2006年、松井章圭氏との運営方針の違いから極真会館松井派を離脱し、財団法人極真奨学会国際空手道連盟極真会館浜井派を設立。代表に就任し、中国への道場開設など、国際的な活動も展開します。中国では、13名の黒帯を育成し、中国人の弟子を支部長に任命するなど、着実に基盤を築き上げました。独自の顔面攻撃用グローブの開発など、常に空手の進化を追求する姿勢も持ち合わせていました。

浜井氏は、ビデオを用いた選手の組手研究や他格闘技の技術を取り入れるなど、先進的な指導法でも知られていました。キックボクシングの藤原敏男氏や芦原英幸氏の門下生である中山猛夫氏の技法を研究し、水口敏夫氏や増田章氏などの弟子に指導することで、彼らの技術向上に貢献しました。

2023年12月、急性骨髄性白血病と診断され、わずか1週間で亡くなりました。空手家、実業家として輝かしい功績を残した浜井識安氏の死は、多くの人々に深い悲しみを与えました。彼の功績は、後世に語り継がれることでしょう。

著書

『人生経営の強化書』青龍社 1992年
『カラテ革命家「浜井識安」極真新理論』東邦出版 2008年

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