浜野正平

浜野正平：大阪柔道界の重鎮、その生涯と功績

浜野正平（はまの しょうへい、1899年3月22日 - 1974年4月29日）は、講道館柔道九段という卓越した段位を持つ柔道家です。彼は選手として、そして指導者として、日本の柔道界、特に大阪の柔道界において、その名を深く刻みました。

若き日の修練と研鑽

香川県坂出市で生を受けた浜野は、幼少期より地元の伝統武術である無相流柔術を学びました。坂出商業学校時代には、吉本官次から柔道の基礎を教わります。その後、彼は明治大学法科専門部へ進学するために上京、後に大阪外国語学校支那語科（二部）にも籍を置きました。明治大学では三船久蔵に師事し、講道館や大日本武徳会では永岡秀一、佐村嘉一郎といった大家の指導を受け、1917年9月に講道館に入門。その翌年には初段、1919年には二段、1921年には三段へと、着実にその腕を上げていきました。

指導者としての活躍

当時としては稀な高段位であった二段・三段の時代から、浜野は指導者としての道を歩み始めます。1922年4月から1925年3月まで官立大阪外国語学校で師範を務めたほか、同年11月からは大阪府警察部柔道教師（後に主任師範）を、1925年10月からは旧制四條畷中学校（現・府立四條畷高校）で指導。その後も府立園芸高校、大阪貿易学校（現・開明高校）、官立大阪高校など、数々の学校で柔道師範を兼任しました。また、“西の講道館”と称された洪火会では首席理事として、多くの門下生を育成しました。

1928年1月には五段に昇段し、同年5月には柔道教士の称号を授与されました。1938年2月には七段に達しています。

選手としての輝かしい実績

浜野は指導者としてだけでなく、選手としても優れた実績を残しました。1924年11月の明治神宮大会では、大阪代表として青年組の部に出場し、決勝リーグに進出。1937年10月の全日本選士権大会では、近畿代表として専門成年前期の部に出場し、準優勝を果たしました。その他、全満州・全大阪、全台湾・全大阪の対抗試合にそれぞれ2度出場、全京都・全大阪、全熊本・全大阪の対抗試合では大阪チームの主将を務めるなど、数々の大会で活躍しました。

身長167cm、体重73kgというバランスの取れた体格から繰り出される、送足払や小外刈などの足技、払腰や横捨身技を得意とし、天神真楊流柔術の修行で培った寝技も彼の大きな武器でした。

戦後の復興と国際化への貢献

終戦直後の1945年5月、浜野は八段に昇段。戦後の荒廃からの復興には柔道の力が必要と考え、大阪にニュージャパン柔道協会を設立し、柔道の普及・振興に尽力しました。大阪税関柔道師範、大阪府柔道連盟会長などの要職を歴任し、大阪府警察では長年にわたり警察官の指導に当たりました。

これらの功績が認められ、1958年5月には九段に昇段。1960年代以降の柔道国際化の流れの中では、全日本柔道連盟国際試合選手強化委員会の委員長として、国際試合における日本選手の育成に大きく貢献しました。1965年、1967年、1969年の世界選手権大会で日本代表を優勝に導き、1972年のミュンヘン五輪後、強化委員長を辞任。その後もソ連に招かれ、柔道指導を行うなど、その情熱は衰えることを知りませんでした。

晩年と遺産

1974年4月29日、浜野正平は脳血栓症により75歳で生涯を閉じました。柔道家としてだけでなく、囲碁にも造詣が深く、関西棋院から五段位を授与されるほどの腕前でした。彼の死は、多くの関係者に深い悲しみを与えました。

彼の功績を称え、講道館大阪国際センターには銅像が建立されています。浜野正平は、大阪柔道界の発展に大きく貢献した人物として、その名は永く語り継がれることでしょう。

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