浦和高等学校 (旧制)

旧制浦和高等学校：伝統と変革の歩み

1921年（大正10年）、埼玉県浦和町（現在のさいたま市浦和区）に設立された旧制浦和高等学校（通称：浦高）は、官立旧制高校として20番目に誕生しました。文科と理科からなる3年制の高等科を擁し、東京帝国大学への進学率は、第一高等学校に次ぐ高い実績を誇っていました。

多くの学生が学んだ浦高には、「武原寮」という寄宿舎が設置され、学生生活を支えていました。高木市之助作詞、弘田龍太郎作曲による校歌「大いなるかな武蔵野は」は、現在もなお、その伝統を歌い継いでいます。

浦高の設立は、高等学校令に基づくものでした。埼玉県は、校地として2万坪の土地を提供し、その場所は武蔵野の面影を残す砂原に決定されました。初代校長は吉岡郷甫氏が務め、校地は「瑤沙原」と名付けられました。1922年3月には本館が完成し、多くの志願者の中から選ばれた200名余りの生徒が入学しました。

その後、浦高は幾多の出来事を経験します。浦和、新潟、山形の3校による対抗戦や、静岡高等学校との定期戦が開催されるなど、活気ある学校生活が送られました。しかし、1927年には自治寮を巡るストライキが発生するなど、生徒と学校運営側の摩擦も生じました。また、1930年には新聞部弾圧に端を発するストライキ、1931年には生徒課との対立によるストライキが起こっています。1935年には自治寮が武原寮と改称されました。

太平洋戦争下の1940年には、浦和高等学校報国団が結成され、戦時体制下での活動が余儀なくされました。戦争末期には空襲により講堂と本館が焼失する被害を受けました。終戦後、新制大学への移行に伴い、東京大学への包括という案も検討されましたが、最終的には埼玉大学の前身校の一つとなり、文理学部の母体となりました。1950年3月、最後の卒業生を送り出し、浦高の歴史は幕を閉じました。

浦高には、多くの著名な卒業生を輩出しました。学者・文化人では、言語学者の金田一春彦氏、小説家の武田泰淳氏、フランス文学者の澁澤龍彦氏などが挙げられます。政官界では、安倍勲氏（国連大使）、伊東正義氏（元外務大臣）、田中龍夫氏（元通産大臣）などが名を連ねています。経済界からも、多くの企業のトップやリーダーを輩出しています。

浦高の校地は、埼玉大学のキャンパスとして継承されましたが、1969年の移転に伴い、跡地は県立北浦和公園と市立浦和北公園として整備されました。現在も、正門や記念碑などが当時の面影を残しています。また、武原寮の跡地にはさいたま市立常盤小学校が建設され、「浦高記念碑」が建立されています。

旧制浦和高等学校は、激動の時代を生き抜き、多くの優秀な人材を育成した名門校として、その歴史に深い足跡を残しました。その伝統は、埼玉大学をはじめ、多くの卒業生によって受け継がれ、現在も脈々と息づいています。

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