海上自衛隊生徒及び航空自衛隊生徒

海上自衛隊生徒・航空自衛隊生徒（海空生徒）とは

海上自衛隊と航空自衛隊には、かつて「海空生徒」と呼ばれる制度が存在しました。これは、中学校卒業者を対象に、曹（下士官）を養成するための特別な教育課程です。一般の自衛官とは異なり、入隊と同時に3等海士または3等空士に任官され、教育訓練に専念する点が特徴でした。

制度の沿革

1955年（昭和30年）、海上自衛隊の舞鶴練習隊で第1期生が教育を開始したのが、この制度の始まりです。その後、長年にわたり、多くの若者が海空生徒として入隊し、技術部門の中核を担う人材へと成長していきました。しかし、2006年（平成18年）に第53期生の募集を最後に新規採用は停止され、2011年（平成23年）3月には航空教育隊生徒隊が、同年4月には海自第1術科学校生徒部が廃止され、制度は完全に幕を閉じました。

制度の特色

海空生徒は、入隊時に3等海士または3等空士に任官されますが、これはあくまで教育課程上の位置づけであり、一般の3等海士・空士とは異なり、任期制ではない非任期制隊員でした。約4年間の課程を修了すると、3等海曹または3等空曹に昇任すると同時に、高等学校卒業資格を取得することができました。また、防衛大学校や航空学生への進学、幹部への転官の道も開かれていました。ただし、この制度は男子のみを対象としていました。

人事管理

海空生徒の階級は、入隊時から課程修了までの間、以下のように推移しました。

採用時：3等海士・3等空士
1年6ヶ月後：2等海士・2等空士
2年後：1等海士・1等空士
3年後：海士長・空士長
4年後（修了時）：3等海曹・3等空曹

この制度の特筆すべき点は、技術教育に重点が置かれていたことです。多くの卒業生が、技術海曹・空曹として、あるいは幹部として、自衛隊の様々な分野で活躍しました。

服制

海空生徒は、曹候補者徽章（甲）を着用していました。海上自衛隊生徒は、海軍飛行予科練習生に由来する7つボタンの短ジャケットを着用していましたが、胸の生徒識別章が異なるのみでした。航空自衛隊生徒は、冬服上衣の肩章の縁や袖、正帽の周縁に銀色の線が入っていました。

3士制度について

自衛隊法上、3等海士・3等空士の階級は、海空生徒に限定されたものではありません。しかし、実際には、3等海士・3等空士の階級は、海空生徒として採用された者のみに与えられていました。一般隊員として入隊した者には、2等海士・2等空士の階級が指定されていました。また、海空生徒は、自衛隊法第36条第1項の適用が除外され、非任期制隊員として扱われていました。

制度廃止の背景

海空生徒制度は、自衛隊の人員削減と人件費抑制策、そして少年兵に関する国際条約との整合性を図る必要性から、2011年（平成23年）3月をもって廃止されました。これにより、長年にわたり自衛隊を支えてきた制度は、その歴史に幕を下ろすことになりました。

関連法令

自衛隊法施行規則（昭和29年総理府令第40号） 第24条第2項ただし書き
自衛隊生徒の任用等に関する訓令（昭和30年防衛庁訓令第51号）

著名な出身者

海空生徒の出身者の中には、様々な分野で活躍している人物がいます。

水津正臣：弁護士（海上自衛隊生徒第6期）
武論尊（史村翔）：漫画原作者（航空自衛隊生徒第9期）
本宮ひろ志：漫画家（航空自衛隊生徒第9期中退）
小西誠：反戦自衛官（航空自衛隊生徒第10期）
木村清：実業家（すしざんまい社長）（航空自衛隊生徒第14期）
小原凡司：笹川平和財団上席フェロー（海上自衛隊生徒第24期）
原田哲郎：ドリームインキュベータ代表取締役CEO（海上自衛隊生徒第27期）
冨永晃道：ラジオDJ（海上自衛隊生徒35期）
原田幸哉：競艇選手（海上自衛隊生徒37期）

脚注

注釈

出典

関連項目

海軍兵学校予科：旧日本海軍の士官学校予科。
海上保安学校、海上保安大学校：海上保安庁の職員を育成する教育機関。

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