海上郡 (上総国)

海上[[郡]]（うなかみぐん）

海上[[郡]]は、かつて上[[総国]]（かずさのくに）に存在した郡です。現在の千葉県市原市のうち、養老川左岸地域にあたります。この地は、古代から中世、近世にかけて、その姿を変えながら歴史を刻んできました。

古代

海上[[郡]]は、古代には上海上国造（うなかみのくにのみやつこ）の領域を中心に編成されました。養老川下流域の姉崎地区には、姉崎古墳群が点在しており、これらの古墳は、上海上国造の首長一族の墳墓と考えられています。この地域は、古代から有力な豪族が支配していたことがうかがえます。

『続日本紀』には、神護景雲元年（767年）9月22日の条に、上海上国造の末裔とみられる檜前舎人直建麻呂（ひのくまのむらじのたけまろ）に上総宿禰（かずさのすくね）の姓が与えられたと記されています。また、宝亀6年（775年）3月2日には、彼が隼人正（はやとのしょう）に任じられたとあります。これらの記述から、海上[[郡]]が当時、朝廷からも注目されていた地域であったことがわかります。

万葉集には、海上[[郡]]の風景を詠んだ歌が二首収録されています。巻七には、「夏麻引く海上潟の沖つ洲に鳥はすだけど君は音もせず」とあり、夏の麻を引く情景と、鳥の鳴き声が聞こえる中、恋しい人の音沙汰がない寂しさが詠まれています。また、巻十四には、「夏麻引く海上潟の沖つ洲に船は留めむさ夜更けにけり」とあり、同じく麻を引く情景と、夜が更けるまで船を留めていた様子が描かれています。これらの歌から、当時の海上[[郡]]は、麻を栽培する場所として、また、海や潟が広がる風光明媚な地であったことが想像できます。

また、海上[[郡]]には、島穴神社（しまあなじんじゃ）と姉埼神社（あねさきじんじゃ）という二つの式内社（しきないしゃ）が存在します。上[[総国]]の式内社は数が少ないため、一つの郡に複数の式内社があるのは海上[[郡]]のみです。これは、海上[[郡]]が古代において重要な地域であったことを示唆しています。

中世

中世に入ると、海上[[郡]]は海北郡（かいほうぐん）と佐是郡（さぜぐん）の二つに分割されました。この分割の詳しい経緯は不明ですが、この地域の支配体制や社会構造の変化に伴うものと考えられます。

近世

近世に入ると、江戸時代初期に海上[[郡]]は市原[[郡]]（いちはらぐん）の一部となりました。これにより、海上[[郡]]としての歴史は幕を閉じ、その領域は市原[[郡]]の一部として新たな時代を迎えることになります。

郷

『和名類聚抄（わみょうるいじゅしょう）』には、海上[[郡]]に属する8つの郷が記されています。

佐是（さぜ）
稲庭（いなには）
大野（おおの）
山田（やまだ）
倉橋（くらはし）
福良（ふくら）
島穴（しまあな）
馬野（まの）

式内社

『延喜式（えんぎしき）』神名帳には、海上[[郡]]に属する以下の二つの式内社が記されています。

島穴神社
姉埼神社

参考文献

小笠原長和 監 『千葉県の地名（日本歴史地名大系 12）』 平凡社、1996年、ISBN 4-582-49012-3
「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典』 12 千葉県、角川書店、1984年3月1日。ISBN 4040011201。

関連項目

海上[[郡]] (下[[総国]]) - 同名の郡。
消滅した郡の一覧

もう一度検索