海岸町 (函館市)

海岸町の歴史と変遷

海岸町（かいがんちょう）は、北海道函館市に位置する町丁で、その歴史は古く、明治時代初期まで遡ります。この地域は、函館市の旧市街地が広がる砂州上に位置し、函館港に面しています。海岸に沿って位置することから「海岸町」と名付けられました。

1869年（明治2年）9月には既にこの地名が存在しており、1873年（明治6年）5月には亀田村から函館区に編入されました。編入前は、亀田村と函館（当時の箱館）との境界に位置し、箱館側の境界地は一本木または一本木村と呼ばれていました。境界は、通称松川街道と呼ばれる五稜郭築城の際の工事道路の入口付近にありました。

明治以前の海岸町は、漁師の納屋が点在する程度で、家はほとんどありませんでした。明治15、16年頃でも家はわずか5、6軒しかなく、排水状況が悪く、雨が数日続くと道は泥濘化し、通行が困難になることもありました。しかし、馬や馬車による地方から箱館への通行が多く、特に10月末から11月にかけての大根の輸送時には、1日に1200台もの荷馬車が通行したという記録が残っています。

1879年（明治12年）には、開拓使が農業仮博覧会を開催し、1883年（明治16年）にはその施設を借りて函館海岸町競馬場が開設されました。しかし、この競馬場は1896年（明治29年）に現在の日本中央競馬会函館競馬場がある場所（函館市駒場町）に移転しました。

1902年（明治35年）から1904年（明治37年）の間、海岸町には函館駅（初代）が設置されていました。当初は現在の若松町に駅を設ける計画でしたが、鉄道敷設による危険性を懸念する住民の意見が採用され、海岸町に設置されました。函館駅の移転後、駅は亀田駅と改称されましたが、1908年（明治41年）3月に焼失しています。その後、旧函館駅の所在地を示す記念碑が設置されましたが、周辺の宅地化に伴い、1990年（平成2年）に函館シーポートプラザに移設されました。

1911年（明治44年）3月23日には、140戸を焼失する大火が発生しました。また、鉄道工場や狭かった函館駅、機関庫の影響で、同町の踏切が頻繁に降り、馬車が20数台も並ぶことも珍しくありませんでした。1924年（大正13年）1月4日には、線路が新線に切り替えられ、交通の不便が解消されました。

1931年（昭和6年）9月には、この方面の町名大改正の際、一部が万代町に譲渡されました。また、公選函館市長の坂本森一が、就任の嬉しさのあまり連絡船を待たずに漁船で町内に上陸したという逸話も残っています。

海岸町の年表

1873年（明治6年）5月：龜田村より函館区に編入、函館区海岸町となる。
1879年（明治12年）：第2回農業仮博覧会が開催される。
1883年（明治16年）：函館海岸町競馬場が開場。
1896年（明治29年）：函館海岸町競馬場が湯川村に移転。
1898年（明治31年）9月：函館港第1防砂堤竣工。
1902年（明治35年）：函館駅（初代）が開業。
1904年（明治37年）7月1日：現・函館駅延伸開業により函館駅（初代）を亀田駅に改称。
1908年（明治41年）3月：亀田駅焼失。
1911年（明治44年）3月23日：大火発生。
1913年（大正2年）10月30日：海岸町停留場が開業。
1922年（大正11年）8月1日：函館区が市制施行、函館市海岸町となる。
1922年（大正11年）月日不明：内務省、亀田村内から若松町停留所までの国道を人道と車道を区別する道路改修を行う。
1923年（大正12年）10月15日：函館測候所（現・函館地方気象台）が、高砂町（現・若松町）より移転。住所は函館市海岸町埋立地。
1923年（大正12年）12月10日：函館測候所敷地内に検潮所を新設。
1924年（大正13年）1月4日：海岸町踏切廃止。
1925年（大正14年）12月10日：検潮所の導水管が故障したため、町内築港船入澗に検潮所を移転。
1931年（昭和6年）9月：一部が万代町へ譲渡。
1940年（昭和15年）9月1日：函館測候所（現・函館地方気象台）が、龜田村（現・函館市美原三丁目）に移転。
1943年（昭和18年）10月1日：検潮所が函館海洋気象台（現・函館地方気象台）の観測業務に編入。
1946年（昭和21年）：中央ふ頭着工。
1968年（昭和43年）：中央ふ頭に港湾合同庁舎新築落成。
1971年（昭和46年）：中央ふ頭竣工。
1984年（昭和59年）：北海道警察函館西警察署が函館市大町より移転。
1993年（平成5年）4月1日：函館市交通局（現・函館市企業局交通部）本線の廃止に伴い、海岸町停留場廃止。
1997年（平成9年）3月27日：函館湾岸大橋(ともえ大橋)第1工区共用開始。

主な施設

公共施設

函館税関
函館地方気象台検潮所
北海道警察函館西警察署

道路

国道5号
函館湾岸大橋（ともえ大橋）

金融機関等

函館海岸郵便局

かつてあった主要施設

公共施設

函館測候所（現・函館地方気象台）

交通

函館駅（初代） - 亀田駅
函館市交通局　海岸町停留場

商業・娯楽施設

* 函館海岸町競馬場


海岸町は、その歴史の中で函館の発展に深く関わってきました。鉄道や港湾、競馬場など、さまざまな施設が置かれ、多くの人々の生活と密接に関わってきたことがうかがえます。現在も、函館の重要な一部として、その役割を果たし続けています。

もう一度検索