海軍テストパイロット学校

米国海軍テストパイロット学校(USNTPS)



米国海軍テストパイロット学校(United States Naval Test Pilot School, USNTPS)は、航空機の性能評価やシステム試験の専門家を育成するための高等教育機関です。メリーランド州パタクセント・リバー海軍航空基地に本拠を置き、米国海軍、海兵隊、陸軍、空軍といった各軍のほか、海外の友好国から選抜された経験豊富なパイロット、フライトテスト技術者、そして航空士官を受け入れています。ここでは、最先端の航空機や関連システムの試験、評価に必要な高度な知識と技術が集中的に教授されます。

特に注目すべきは、USNTPSが米国軍において唯一ヘリコプターの専門的なテストパイロット訓練を実施している点です。このため、回転翼機の開発・評価に不可欠な専門家を育成する機関として、特に米国陸軍にとっては中心的な役割を担っています。

歴史



USNTPSの歴史は、1945年に海軍飛行試験グループがワシントンD.C.のアナコスティア海軍支援施設からパタクセント・リバー海軍航空基地へ移転した際に設立された、テストパイロット訓練部門に遡ります。最初の卒業生を送り出したのは1948年12月21日のことでした。学校が現在の正式名称である「United States Naval Test Pilot School」として認められたのは、1957年です。

学校の発展とともに、訓練内容は時代のニーズに合わせて拡充されてきました。

1961年: ヘリコプターに関する講義が導入され、回転翼機の試験評価技術教育が本格化しました。
1973年: 現在の基準となる11ヶ月間の長期課程が確立されました。
1975年: 空輸システム、すなわち輸送機や空中給油機などに関する専門講義が追加されました。
1997年: 特定分野に特化した短期課程を扱う部門が設立され、より多様な訓練ニーズに対応できるようになりました。

訓練課程



USNTPSへの入学は非常に競争率が高く、希望者は厳しい選考過程を経て、特別な選考委員会によってその適性が判断されます。入学を許可された学生は、主に以下の3つの専門分野の中からいずれかを選択し、訓練を受けます。

固定翼機課程: 主にジェット機やプロペラ機といった固定翼航空機のパイロットおよびフライトテスト技術者を育成します。
回転翼機課程: ヘリコプターを含む回転翼航空機のパイロットおよびフライトテスト技術者に特化した課程です。前述の通り、これはUSNTPSのユニークな特徴の一つです。
空輸システム課程: 海上哨戒機や輸送機などのシステム評価に携わる海軍航空士や技術者を対象としています。

これらの課程は、約11ヶ月にわたる集中的なプログラムで構成されています。訓練内容は、高度な理論と実践的な飛行訓練を組み合わせたものです。

具体的な訓練項目には、以下のようなものが含まれます。

到着前飛行訓練: 課程開始前に、ペンサコーラ海軍航空基地でのT-6練習機や、ランドルフ空軍基地でのT-38C練習機、さらにH-72やH-60ヘリコプターなど、多種多様な機材を用いた飛行訓練が行われます。
学科授業: 約530時間に及ぶ座学では、航空力学、飛行制御、システム工学、試験計画、データ解析など、テスト評価に必要な幅広い専門知識を習得します。
飛行訓練: 課程期間中に約100回の短期飛行ミッションを実施し、合計約120時間の飛行時間を積み重ねます。様々な機体を用いた実機での試験飛行を通じて、理論を実践に結びつけます。
* 技術レポート: 実施した試験飛行や研究に基づき、約25編の技術報告書を作成・提出します。これにより、科学的な手法に基づいたデータ収集、解析、報告書の作成能力が養われます。

著名な卒業生



USNTPSはその設立以来、多くの優れたテストパイロットや技術者を輩出してきました。特に、宇宙開発プログラムにおいて重要な役割を果たした宇宙飛行士が数多く卒業生リストに名を連ねています。

著名な卒業生には、アラン・シェパード(米国初の有人宇宙飛行士)、スコット・カーペンター、ジム・ラヴェルウォルター・シラー、ジョン・ヤング、ジョン・ハーシェル・グレン(初の地球周回軌道飛行士)、ピート・コンラッド、アラン・ビーン、フレデリック・グレゴリー、チャールズ・ボールデン(元NASA長官)、マーク・ケリー、スコット・ケリーといった、米国宇宙開発史に名を刻む人物が含まれます。彼らは、USNTPSで培った高度な飛行技術、システム評価能力、そして問題解決能力を、新たなフロンティアへの挑戦に活かしました。

これらの卒業生たちの功績は、USNTPSが航空宇宙分野の最前線で活躍する専門家を育成する上で、いかに重要な役割を果たしてきたかを物語っています。

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