ウォルター・シラー

ウォルター・M・シラー・ジュニアの生涯

ウォルター・マーティ・“ウォリー”・シラー・ジュニア（Walter Marty "Wally" Schirra Jr.、1923年3月12日 - 2007年5月3日）は、アメリカ合衆国の海軍飛行士、テストパイロット、そしてNASAの宇宙飛行士として、その名を歴史に刻みました。彼は、アメリカ初の有人宇宙飛行計画である「マーキュリー計画」のメンバーに選ばれ、その後もジェミニ計画、アポロ計画と、3つの有人宇宙飛行計画全てに参加した唯一の人物です。シラーは、宇宙へ3度飛行した初の宇宙飛行士であり、その総滞在時間は295時間15分に及びます。

若年期と教育

シラーは、1923年3月12日にニュージャージー州ハッケンサックで生まれました。彼の父親は第一次世界大戦中にカナダ空軍でパイロットを務め、戦後は曲芸飛行家として活躍しました。母親もまた、飛行機の翼の上を歩くスタントを行うなど、飛行と密接な家庭環境で育ちました。

ニュージャージー州オラデルで育ったシラーは、ボーイスカウト活動にも励み、1940年にはドワイト・モロー高校を卒業しました。その後、ニューアーク工科大学（現ニュージャージー工科大学）に進学し、予備役将校訓練課程を受講。真珠湾攻撃を機に海軍兵学校への入学を決意し、1945年に理学士号を取得しました。

軍歴

1945年、海軍兵学校を卒業後、シラーはアメリカ海軍少尉に任官し、大型巡洋艦アラスカに配属されます。第二次世界大戦終結後、中国の青島に駐留し、揚陸指揮艦エステスに配属されました。帰国後、ペンサコーラ海軍航空基地で海軍飛行士としての訓練を開始し、1948年に海軍飛行士の資格を取得。

朝鮮戦争勃発時には、空母ミッドウェイで地中海に派遣され、その後、空軍との交換プログラムでF-84サンダージェットの飛行訓練を受けます。朝鮮半島では、MiG-15を2機撃墜するなどの戦果を挙げ、90回の戦闘任務をこなしました。その後、テストパイロットとしてキャリアを積み、サイドワインダーミサイルの発射テストや、最新ジェット戦闘機のテスト飛行に従事しました。

NASAでのキャリア

マーキュリー計画

1959年、シラーはマーキュリー計画の宇宙飛行士候補として選抜され、アメリカ初の有人宇宙飛行計画に携わることになります。彼は生命維持装置と与圧飛行服の担当となり、宇宙カプセルの設計にも貢献しました。1962年10月3日、マーキュリー・アトラス8号に搭乗し、地球を6周するミッションを成功させ、アメリカ人で5人目、人類で9人目の宇宙旅行者となりました。

ジェミニ計画

ジェミニ計画では、1965年12月にジェミニ6-A号の船長を務め、ジェミニ7号とのランデブー飛行という、史上初の快挙を達成しました。このミッションでは、打ち上げ直前にエンジンが停止するというトラブルに見舞われましたが、シラーの冷静な判断により、ミッションは成功に導かれました。また、クリスマスが近い時期だったことから、管制官に対してサンタクロースの目撃情報を報告した後、ハーモニカで「ジングルベル」を演奏するという粋な演出も行いました。

アポロ計画

1968年10月、シラーはアポロ7号の船長として、3人乗りのアポロ宇宙船の試験飛行に挑みました。このミッションでは、地球低軌道での11日間の飛行試験が行われ、宇宙船の安全性を確認しました。しかし、ミッション中に風邪をひいたことが原因で、再突入時にヘルメットを着用しないという強硬な態度を取ったことでも知られています。

シラーは、マーキュリー、ジェミニ、アポロの全ての計画で宇宙飛行を経験した唯一の宇宙飛行士であり、3度宇宙へ行った初の宇宙飛行士となりました。

引退後

アポロ7号の飛行後、シラーは海軍とNASAを退役。その後は、CBSニュースのコンサルタントとして、アポロ計画の報道に携わりました。彼は、NASAの7回の月面着陸ミッション全てにおいて、ウォルター・クロンカイトとともにキャスターを務めました。

また、実業家としても活動し、金融・リース会社や環境関連企業を設立しました。さらに、宇宙飛行士の奨学金を設立するなど、教育分野への貢献も行いました。

晩年と死去

シラーは、2007年5月3日に胃癌の治療中に心筋梗塞で亡くなりました。彼の遺灰は、空母「ロナルド・レーガン」から海に撒かれました。シラーの功績を讃え、彼の名前を冠した貨物弾薬補給艦「ウォリー・シラー」が建造されたほか、小惑星にも彼の名前が付けられています。

賞歴と献名

シラーは、その功績により数々の勲章や賞を受賞しました。その中には、3つのエア・メダル、3つのNASA特別功労章、NASA優等勤務章、ハーモン・トロフィー、コリアー・トロフィーなどが含まれます。また、国際航空宇宙殿堂、国際宇宙殿堂、全米航空殿堂など、数多くの殿堂入りを果たしています。

大衆文化におけるシラー

シラーの生涯は、映画やテレビドラマで何度も描かれてきました。映画『ライトスタッフ』では、ランス・ヘンリクセンが、テレビドラマ『フロム・ジ・アース/人類、月に立つ|フロム・ジ・アース_人類、月に立つ』では、マーク・ハーモンがシラーを演じました。その他にも、さまざまな作品で、シラーの宇宙への挑戦が描かれています。

ウォルター・M・シラー・ジュニアは、その勇敢な精神と卓越した技術で、アメリカの宇宙開発に多大な貢献を果たした人物として、永遠に語り継がれるでしょう。

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