淡島椿岳

淡島椿岳（あわしま ちんがく）

淡島椿岳（1823年7月 - 1889年9月21日）は、幕末から明治初期にかけて活躍した日本の画家です。本名は小林城三、小林椿岳の名でも知られています。明治時代の作家・画家・蒐集家として知られる淡島寒月は実子です。

生涯

武蔵国川越（現在の埼玉県川越市）の富農、内田善蔵の三男として生まれました。幼少の頃から絵を好み、その才能を発揮しました。後に、兄が幕府御用商人である伊藤八兵衛となった関係で、自身も日本橋馬喰町の豪商・服部喜兵衛の婿養子となり、淡島姓を名乗りました。その後、水戸藩の御家人株を買って小林城三と改名しています。

絵の道に進むことを志した椿岳は、大西椿年に大和絵を学び、谷文晁や高久隆古にも師事しました。日本の伝統的な画法に留まらず、洋画も積極的に取り入れました。川上冬崖や高橋由一らとの交流を通して、新たな表現を追求しました。

1859年には息子である寒月が生まれますが、椿岳は奔放な生活を続けました。1870年、愛人と共に浅草寺境内の伝法院に住み着き、奇人・変人としての伝説的な生活が始まりました。西洋画を買い付け、「西洋目鏡」と名付けた見世物小屋を浅草寺で開きます。入場料を安価にしたため、多くの人々が詰めかけ、西郷隆盛も見学に訪れたと言われています。その後、浅草寺境内の淡島堂に移り、頭を丸めてデタラメなお経をあげるにわか坊主となりました。そこで泥絵による洋画風の風景画や風俗画を描き、評判を呼びました。これが浅草絵の創始とされています。また、鳥羽僧正の鳥獣戯画に影響を受け、独自の「椿岳漫画」を制作し、漫画家としても名を成しました。

1884年には、向島の弘福寺門前に梵雲庵を建てて移り住み、易者の真似事などをして過ごしました。1889年、一ヶ月の放浪の旅から帰宅した直後、梵雲庵で亡くなりました。辞世の句は「今まではさまざまの事して見たが、死んで見るのはこれが初めて」です。墓は谷中霊園にあり、「吉梵法師」と刻まれています。

人物

椿岳は、伝統的な日本画の技法を習得しながらも、洋画の要素を取り入れるなど、革新的な作風を確立しました。また、浅草での見世物小屋やにわか坊主など、奇抜な行動で人々を驚かせました。その奔放な生き方と多才な芸術性は、多くの人々を魅了し、現在でも語り継がれています。まさに、幕末から明治という激動の時代を象徴する異才の画家と言えるでしょう。

参考文献

山口昌男『「敗者」の精神史』（岩波書店、1995年）
内田魯庵『思ひ出す人々』（春秋社、1925年）

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