深堀事件

深堀事件とは

深堀事件は、元禄13年（1701年）に肥前国長崎（現在の長崎県長崎市）で発生した、深堀鍋島家の武士と長崎の有力町人である高木彦右衛門との間で起こった騒動です。この事件は、別名「深堀騒動」や「長崎喧嘩」とも呼ばれ、双方に死者を出す深刻な事態となりました。

事件の発端

事件の発端は、深堀鍋島家の家臣である深堀三右衛門とその甥の志波原武右衛門が、高木彦右衛門の家来と些細なことから口論になったことにあります。当時、雪解けの泥が原因で諍いがおこり、仲裁で一旦は収まりましたが、夕刻に高木側の家来が深堀家の蔵屋敷に乱入し、暴行と刀の略奪に発展しました。

深堀藩士の討ち入り

この事態を受け、深堀側は三右衛門の息子である嘉右衛門ら12名が高木彦右衛門の屋敷に討ち入り、彦右衛門を含む9名を殺害しました。討ち入り後、三右衛門と武右衛門は切腹しましたが、実際には仲間によって殺害されたとする説も存在します。

長崎奉行の対応

事件は長崎奉行所を通じて幕府に報告され、柳沢吉保らが詮議に参加しました。深堀鍋島家は佐賀藩の家臣であり、武士としての立場が考慮された一方、高木彦右衛門は幕府の仕事を請け負う町人であり、幕府関係者として扱われました。

幕府の判決

幕府の判決では、深堀側の10名が切腹、9名が島流しとなり、高木彦右衛門の息子は家財没収の上で追放となりました。一方、深堀家の当主は不問とされました。

事件の影響

事件後、深堀鍋島家の当主は武士の一分を示したと称賛され、一方、島流しとなった藩士たちは、恩赦で帰還を許されました。この事件は、当時の社会構造や武士と町人の立場の違いを浮き彫りにし、江戸をはじめ全国で話題となりました。また、深堀藩士の討ち入りが、後の赤穂浪士の討ち入りに影響を与えたとする伝承も存在します。

事件の背景

事件の背景には、深堀鍋島家が長崎警護の任にあたっていたこと、また町人である高木氏が幕府から重く扱われていたことへの不満があったとされています。深堀鍋島家は武士でありながら、高木氏のような町人よりも低い扱いを受けていたことが、事件の遠因になったと考えられます。

西川如見の言葉

長崎出身の町人学者・西川如見は、この事件を通じて武士よりも町人の方が良いと述べています。この言葉は、当時の町人の視点から武士という身分に対する疑問を示していると言えるでしょう。

まとめ

深堀事件は、元禄時代の長崎で発生した武士と町人の間の騒動であり、当時の社会構造や人々の意識を反映した重要な出来事です。この事件は、武士の誇りと町人の台頭、そして幕府の対応など、様々な側面から考えることができるでしょう。

参考資料

赤瀬浩『「株式会社」長崎出島』 講談社選書メチエ
外山幹夫『長崎 歴史の旅』朝日新聞社
外山幹夫著 『長崎奉行 江戸幕府の耳と目』中央公論社
森永種夫『流人と非人 長崎奉行の記録』岩波新書
『長崎県の地名 日本歴史地名大系43』 平凡社
『長崎県の歴史』山川出版社

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