深堀村

深堀村（ふかほりむら）

深堀村は、長崎県の南部、現在の長崎半島の中北部に位置していた村です。行政区分としては西彼杵郡に属していました。昭和30年（1955年）1月1日に、隣接する福田村と共に長崎市へ編入されたことにより、自治体としての歴史に幕を下ろしました。現在、この地は長崎市の一部となり、深堀地区としてその名を残しています。

地理的には、長崎半島の中ほどに位置しており、長崎湾に面した地域を含みます。村の主要な地形要素としては、内陸部には城山があり、また、近隣には野牛島のような島嶼も点在していました。長崎湾に面していることは、地域にとって重要な地理的特徴の一つであったと考えられます。

この地の歴史は古く、「戸八ヶ浦」と呼ばれていた時代がありました。建長7年（1255年）には、鎌倉時代の承久の乱における功績により、上総国伊南荘深堀（現在の千葉県いすみ市周辺）から深堀能仲がこの地の地頭に任じられました。その際に、彼の出身地にちなんで地名が「深堀」に改められたと伝えられています。この出来事は、地域の名称の由来として語り継がれています。

近代に入り、明治22年（1889年）4月1日に町村制が施行された際、それまでの深堀村、大籠村、香焼村が合併し、新たに西彼杵郡深堀村として発足しました。これは、近代地方行政制度の下での新たな出発点となりました。

しかし、合併からわずか9年後の明治31年（1898年）7月1日には、村の一部であった大字香焼が分離し、香焼村として独立しました。これにより、深堀村の区域は一部変更されることとなりました。

その後、昭和の時代に入り、戦後の地方自治体再編の中で、深堀村は大きな転換期を迎えます。昭和30年（1955年）1月1日、深堀村は同じく西彼杵郡に属していた福田村と共に長崎市に編入合併され、自治体としての深堀村は消滅しました。この合併は、周辺町村が長崎市に統合されていく流れの一環として行われたものです。

深堀村の内部における行政上の区分としては、郷や名といった小区分を設けておらず、大字が主な行政区域として機能していました。具体的には、大字大籠、大字香焼、そして大字深堀が存在しました。ただし、大字香焼は前述の通り、明治31年に分離独立したため、深堀村の大字として存在したのは比較的短い期間でした。このような大字のみを区画とする形式は、彼杵地域のいくつかの自治体に見られる特徴でした。

深堀村に関する情報は、地域の歴史や地理を記述した資料、例えば『角川日本地名大辞典 42 長崎県』や、当時の地域の状況を伝える『西彼杵郡現勢一班』などに詳しく記されており、村の歩みをたどる上で貴重な手がかりとなっています。長崎市に編入された後も、「深堀」という地名は地域名として残り、現在も多くの人々に親しまれています。

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