深田金之助

深田金之助（ふかだ きんのすけ）は、1917年1月19日に島根県八束郡揖屋村（現在の松江市）に生まれ、1986年11月27日に69歳でその生涯を閉じた、日本の映画監督であり元撮影技師です。

撮影技師として映画界へ

島根県で育ち、松江商工学校を経て松江高等簿記学校に進学するも、学業半ばで退学。1935年、彼は日活に入社し、京都撮影所で撮影助手としてのキャリアをスタートさせます。着実に技術を磨き、1941年には技師に昇進。

撮影技師デビュー作：『天兵童子 第一話 幼き英雄』（1941年）

このデビュー作以降、『天兵童子』シリーズ全4作で撮影を担当しました。第二次世界大戦中の映画業界再編により、1942年には大映に転籍しますが、同年7月には杉山公平、吉田貞次、加藤泰通（のちの加藤泰）らと共に満洲映画協会へ移籍し、終戦まで撮影技師として活動しました。

戦後、監督への転身

終戦翌年の1946年に日本へ帰国。1950年には、当時東宝撮影所で時代劇を手がけていた稲垣浩に師事し、助監督へと転向します。この時期、稲垣組の作品で助監督を務めながら演出の道を学びました。

監督としての第一歩は、1951年に公開された『玄海灘の怒濤篇 阿修羅龍鬼隊』で、近藤勝彦との共同演出によるものでした。

東映時代劇での活躍

その後、東映京都撮影所と契約を結び、1955年には『雄呂血の秘宝』で監督に昇進。同年には続編も手がけました。東映ではわずか8年間で42本という驚異的な数の時代劇作品を量産し、量産体制を支える監督の一人として活躍しました。しかし、1963年公開の『無法の宿場』を最後に東映を退社します。

テレビ、そして成人映画へ

東映退社後は、高岡昌嗣が率いる東伸テレビ映画などが製作する連続テレビドラマにも参加しました。山城新伍主演の『白馬の剣士』などの監督を務めますが、1965年にはテレビ時代劇の世界からも離れます。

同年11月、『血と肉と罪と』を監督し、成人映画の世界へと活動の場を移しました。この作品は極東映画社が製作し、加山恵子を主演に迎えたものでした。その後も創作8プロダクション製作で加山恵子主演作を数多く手がけ、東映出身の日高綾子も企画・製作・出演で関わりました。

映画史家の田中純一郎や西原儀一は、この成人映画黎明期における重要な監督の一人として深田金之助の名前を挙げています。

1966年3月には、自身の製作会社「アートグループ」を設立。橘桂子主演の『未婚のひめごと』を皮切りに、『情炎の報酬』、『女の中の性』などを製作・監督しました。また、東映京都撮影所の助監督だった西原和紀と共同で、可能かづ子主演の『女豹一番勝負』や桧みどり主演の『真赤な砂』といった作品も手がけています。

成人映画監督として精力的に活動しましたが、1967年7月公開の『快楽の罠』（創作8プロダクション製作、東京興映配給）を最後に、満50歳で沈黙しました。

フィルモグラフィ（抜粋）

彼の多岐にわたるキャリアを示す主な作品には以下のようなものがあります。

撮影
『三味線武士』（1939年、助撮影）
『天兵童子』シリーズ（1941年）
満洲映画協会作品群（1942年-1945年）
脚本
『飛龍無双』（1955年）
監督（東映時代劇、成人映画など）
『玄海灘の怒濤篇 阿修羅龍鬼隊』（1951年、共同監督）
『雄呂血の秘宝』（1955年）
『若さま侍捕物帖 深夜の死美人』（1957年）
『遊侠の剣客 つくば太鼓』（1960年）
『無法の宿場』（1963年）
『血と肉と罪と』（1965年）
『未婚のひめごと』（1966年、製作・監督）
『女豹一番勝負』（1966年、共同監督）
『真赤な砂』（1966年、共同監督）
『快楽の罠』（1967年、製作・監督）
テレビドラマ監督
『白馬の剣士』（1964年）

東京国立近代美術館フィルムセンターは、助撮影として参加した作品に加え、監督作のうち6本のプリントを所蔵しており、深田金之助の映画遺産の一部は現在も確認可能です。

深田金之助は、撮影技師として出発し、東映の時代劇量産期を支え、さらには成人映画という新分野でも活動を展開するなど、激動の昭和の映画史を駆け抜けた人物でした。

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