深衣

深衣（しんい、shēnyī）は、古代中国において主に春秋戦国時代から漢代にかけて着用された、独特な形状を持つワンピース型の衣服です。衽（おくみ）の先を腰に巻き付けて着用する点が特徴で、体を深く覆うデザインが特徴です。

深衣の構造と特徴

『五経正義』によれば、深衣は上衣と下裳が一体となった構造を持ち、体を深く包み込む衣装とされています。丈の長い衽が特徴で、その形状には諸説ありますが、おおむね以下のようにまとめることができます。

衽の処理: 衽を続けて辺に鉤状にする。
スリット: スリットは設けない。
衿: 衿を長くして三角形のように背中へ回す。
固定: 絹の帯で締める。
仕立て: 上下を別々に裁断し、腰回りで縫い合わせる。上半身は体にぴったりとフィットし、下半身の裳はゆったりとした作りで、丈は足の踵に届くか、地面に引きずるほど長い。

深衣の用途と変遷

春秋戦国時代には、男女、貴賤、老若を問わず幅広く着用されていました。士大夫階級にとっては、日常の執務の際の燕服（普段着）として、庶民にとっては吉礼の際に着用されるものでした。『礼記』には、ウェストは裳裾の半分の幅で、袖の長さは袖先を折り返すと肘に当たる程度と規定されています。上半身は比較的タイトに、下半身はゆったりと仕立てられていました。

漢代に入ると、深衣は綿入れで全身を覆う曲裾袍（きょくきょほう）へと発展しますが、後漢時代にはより軽快な直裾袍（ちょくきょほう）（襜褕（せんゆ））が主流となり、深衣は次第に姿を消していきます。しかし、女性の間では依然として人気があり、廟への参拝や繭の収穫などの特別な機会には深衣を着用する習慣が残りました。この頃の深衣は、裾がさらに長く広くなり、衿先に紐を付けて背で結んで着付けられました。

晋代になると、深衣は完全に女性服となり、裾を燕尾型に裁断し、重ね着することで裾がひらひらと色とりどりの旗のように見えるスタイルが流行しました。また、裳から2本ないし数本の帯を垂らすデザインも特徴的です。

深衣の文化的意義

深衣は、古代中国における服装文化を象徴する重要な衣服の一つであり、その変遷は当時の社会や文化の変化を反映しています。男女を問わず、また身分によって異なる着こなしがなされたことは、当時の社会構造や人々の生活様式を理解する上で重要な手がかりとなります。

参考文献

華梅『中国服装史 五千年の歴史を検証する』白帝社

関連項目

民族服
漢服
弁服
長袍
* チャイナドレス

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