清・ジュンガル戦争

清・ジュンガル戦争：三度にわたる激戦の記録

清・ジュンガル戦争は、17世紀末から18世紀中頃にかけて、清朝とオイラト系遊牧民ジュンガル部との間で三度にわたって繰り広げられた戦争です。この戦争は、モンゴル高原の覇権争い、そして中央アジアの政治的勢力図を大きく変えることになりました。

第一次：ハルハ部を巡る争い（1687年 - 1697年）

1686年、ハルハ部（東モンゴル）の内紛をきっかけに、清の康熙帝は事態の収拾を図ります。しかし、トシェート・ハーンが属民の返還を拒否したことから、ジャサクト・ハーンのチェングンがジュンガル部のガルダンに援助を求めようとします。これを察知したトシェート・ハーンはチェングンを殺害、さらにガルダンの弟も殺害したことで、事態は一気に悪化します。

1688年、ガルダンはハルハ部への侵攻を開始。内紛に乗じ、トシェート・ハーンを攻撃しました。トシェート・ハーンは弟と共に清に亡命し、保護を求めます。ガルダンは彼らの引き渡しを要求しますが、清はこれを拒否。これが清とジュンガルの直接的な対立へとつながりました。

1690年、ウラーン・ブトンの戦いで両軍は衝突しますが、決着はつかず、ガルダンは漠北へ退きます。1693年にはクムルのダルハン・ベクらがジュンガルの搾取を嫌い、清に接近。さらにハルハ部が清に臣従したことで、清はモンゴル高原の奪還という大義名分を得ます。

1696年、康熙帝は親征を行い、ジョーン・モドの戦いでガルダンを破ります。敗走したガルダンは1697年に病死し、第一次戦争は終結しました。ガルダンの息子はクムルに亡命しますが、清に引き渡され、クムルは清の版図となります。

第二次：トルファンを巡る争い（1715年 - 1739年）

ガルダンの死後、ツェワンラブタンがジュンガル部の指導者となります。当初は清と友好的な関係を築いていましたが、1715年にクムル・トルファンで衝突が発生し、再び戦争状態に突入します。

1718年、清はジュンガルに対抗するため派遣軍を送りますが、サルウィン川の戦いで壊滅的な打撃を受けます。1720年、康熙帝は再度派遣軍を派遣、チベットに進軍しジュンガル軍を破りました。ダライ・ラマ7世を擁立し、トルファンへの侵攻も開始。当時、ツェワンラブタンはロシアとの紛争で東部の防衛がおろそかになっており、清軍はピチャン、チャルクリク、トルファンを次々と攻略します。

1722年、康熙帝が死去。1725年に清とジュンガルは講和し、清軍は撤退します。トルファンのウイグル人はジュンガルを恐れて清に移住を希望し、受け入れられます。しかし、ツェワンラブタンの子であるガルダンツェリンが1731年に漠北に侵入、ハルハ各部に侵攻し、1739年にジュンガルとハルハ部との間でアルタイ山脈を越えないという境界線が画定されます。

第三次：ジュンガルの滅亡（1745年 - 1759年）

1745年、ガルダンツェリンが亡くなると、ジュンガル部は分裂状態になります。後継者争いが発生し、1750年にラマダルジャーが後を継ぎますが、すぐに幽閉。その後、ダワチが擁立されました。内紛が続く中、ドルベト部などが清に投降、さらにダワチと不和になったアムルサナーも清に投降します。

1755年、清の乾隆帝はこの機に乗じ、モンゴル軍と満州軍を動員した大軍を派遣、ジュンガルを攻撃。わずか100日でダワチを捕獲し、ジュンガル帝国を滅亡させました。清はジュンガルの人々を四部に分け、それぞれにハーンを置き、アムルサナーもその一人となりました。

しかし、1757年、アムルサナーは反旗を翻し独立を宣言。乾隆帝はオイラトの掃滅を命じます。アムルサナーは清軍の追撃を受けて逃亡中に天然痘で死亡。清軍は反乱に徹底的な弾圧を行い、ジュンガルの人々を虐殺、女性や子供はハルハ部に与えられました。この過程で、天然痘が蔓延し、ジュンガルの人口は激減、特にジュンガル人はほぼ全滅したと言われています。

1759年、清はジュンガルを完全に平定し、旧領を接収。1762年には天山山脈北部にイリ将軍府を設置し、軍政を敷きました。そして、この地は「新しい土地」という意味の「新疆」と呼ばれることになりました。

まとめ

清・ジュンガル戦争は、三度にわたる激しい戦いの末、ジュンガル部の滅亡と清朝による中央アジア支配の確立をもたらしました。この戦争は、単なる領土紛争にとどまらず、民族、宗教、文化が複雑に絡み合った歴史的出来事であり、その影響は現代にも及んでいます。

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