渋澤健

渋澤 健（しぶさわ けん）

渋澤 健は、1961年（昭和36年）3月18日にこの世に生を受けた日本の実業家です。現在の主な肩書は、コモンズ投信株式会社の会長、そしてシブサワ・アンド・カンパニー株式会社の最高経営責任者（CEO）であり、さらに成蹊大学の客員教授としても教鞭をとっています。彼は、日本の近代経済社会の礎を築いたとされる渋沢栄一の玄孫にあたる人物として知られています。栄一の孫にあたる渋沢智雄氏の長男、渋沢芳昭氏の息子です。

略歴

渋澤氏は、1961年に渋沢栄一の末裔として誕生しました。父親の仕事の関係で、小学校2年生から大学を卒業するまでの間、アメリカ合衆国で暮らしました。テキサス大学の工学部で学びを終えた後、1984年に財団法人日本国際交流センターへと入りました。その後、1987年にはカリフォルニア大学ロサンゼルス校（UCLA）の経営大学院（MBA）を卒業し、同年にファースト・ボストン証券会社のニューヨーク支店に入社し、外国債券の担当者としてキャリアをスタートさせました。翌1988年にはJPモルガン銀行の東京支店へ移り、1992年には同じJPモルガン傘下の証券会社の東京支店で国債業務に携わりました。1994年にはゴールドマン・サックス証券会社の東京支店に移籍し、国内株式およびデリバティブを担当しました。さらに1996年には、アメリカのヘッジファンドであるムーア・キャピタル・マネジメントのニューヨーク本社に入社し、アジア時間帯のトレーディング業務に従事しました。

長年にわたる金融業界でのキャリアを経て、2001年に自身の会社であるシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を設立し、独立を果たしました。この頃から、祖父である渋沢栄一の思想や功績に対する意識を強めたと語っています。そして2007年には、良質な長期投資を個人投資家に提供することを目指すコモンズ株式会社を設立し、2008年には同社の会長に就任しました。

渋沢栄一の末裔として

渋澤氏は、渋沢栄一の玄孫という立場から、多方面で社会貢献活動にも関わっています。公益財団法人渋沢栄一記念財団の非常勤理事をはじめ、日本医療政策機構、認定NPO法人健康医療評価研究機構、日本ファンドレイジング協会など、様々な団体の理事や評議員を歴任してきました。独立後の2001年頃から、栄一の子孫である渋沢雅英氏（栄一の嫡男・篤二の孫）や渋沢寿一氏（栄一の三男・正雄の孫）らとともに、渋沢家の代表的な存在として、メディアへの出演や全国各地での講演・セミナー開催などを精力的に行い、栄一の思想や生涯について広く伝える活動を展開しています。

草食投資隊

2010年、渋澤氏はセゾン投信の中野晴啓氏、レオス・キャピタルワークスの最高運用責任者（CIO）である藤野英人氏と共に、「草食投資隊」を結成しました。この3人は、直販投信という共通のビジネスモデルを通じて以前から親交がありましたが、2009年に『日経マネー』誌上で行われた鼎談が、共同での啓蒙活動を始める直接的なきっかけとなりました。渋澤氏は、当時のことを振り返り、「日本において長期投資が十分に根付いていない状況を変えたい、という3人共通の強い思いがあった」と述べています。その熱意を具体的な形にするため、まず最初に共同での著作を出版することを決めました。隊の名称である「草食投資隊」は、当時流行していた「肉食系」「草食系」という言葉から着想を得たものです。投資という行為は一般的に「肉食系」のイメージが強いかもしれませんが、彼らが提案するのは、毎月コツコツと積み立てることで、過度にリスクを取らず、心理的な負担も少ない「ドキドキしない」投資法であり、これはむしろ「草食系」のイメージに近いのではないか、という考えからこのユニークな名称が生まれたそうです。草食投資隊として、彼らは長期・積立・分散投資の重要性を広めるため、日本全国で積極的にセミナー活動を展開しています。

渋澤健氏は、自身の金融業界での豊かな経験と、偉大な祖先である渋沢栄一から受け継いだ哲学を融合させ、日本の個人投資家がより賢く、より安定した資産形成を行うための道筋を示すことに力を注いでいます。彼の活動は、単なる投資手法の紹介に留まらず、日本の金融リテラシー向上や、持続可能な社会の実現に向けた示唆に富むものです。

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