渡世人 (1967年の映画)

映画『渡世人』について

1967年（昭和42年）7月30日に東映系で公開された映画『渡世人』（とせいにん）は、股旅情緒溢れる任侠大作として知られています。佐伯清が監督を務め、当時の東映任侠路線で人気を博していた梅宮辰夫が主演を務めました。この作品は、激動の昭和初期を舞台に、社会の混乱に乗じて利権を貪ろうとする者たちと、あくまで古き良き任侠の道を貫こうとする渡世人たちの生き様を対比的に描いています。

物語の背景と展開

物語は、昭和初期の緊迫した時代を背景に展開します。特に、満州における日本の駐留軍と現地住民との間で関係が悪化し、社会全体に不穏な空気が漂い始めていました。この混乱期に乗じて、自らの利益を拡大しようと画策する者たちが暗躍します。

そんな中、正宗一家の三代目である塚本秀之助は、緊迫する満州情勢とそれに伴う国内の混乱を深く憂慮していました。彼は、海を渡って日本にやって来た満州の馬賊の頭目、北天竜と手を結び、この難局を乗り切るための策を練り合います。

一方、この時代の混乱から巨万の富を得ようと目論む人物がいました。上毛組の藤井丑松です。彼は、塚本と北天竜の連携が自身の利権拡大の妨げとなると考え、彼らを排除することを決めます。藤井は、博徒である黒金一家の五代目、広川大介に接近し、両名の暗殺を依頼するという、非情な計画を持ちかけます。

このように利権を巡る陰謀が渦巻く日本の社会で、映画は「渡世人」として生きる男たちの姿を浮き彫りにします。主演の梅宮辰夫が演じる大泉新次郎をはじめとする登場人物たちは、目先の利益に走る者たちとは一線を画し、渡世人が重んじるべき古来からの掟や義理人情を守ろうと奮闘します。真の任侠とは何か、時代の変化の中でその価値が問われる中で、彼らは自らの生き様を通してその答えを示そうとします。

スタッフと音楽

本作を完成へと導いた主なスタッフは以下の通りです。

監督: 佐伯清
企画: 俊藤浩滋、矢部恒、吉田達
脚本: 棚田吾郎
撮影: 飯村雅彦
照明: 桑名史郎
美術: 北川弘
音楽: 木下忠司
編集: 長沢嘉樹
擬斗: 日尾孝司

映画の雰囲気を盛り上げる主題歌は二曲が使用されました。

「男無情」：作詞は十二村哲、作曲は音賀良一が手掛け、城卓矢が歌唱を担当しました。
「上州八木節」：こちらは椛沢芳月らが歌い、横笛を老成参州、鳴物を田沢鶴粋が担当しました。

主なキャスト

本作には、主演の梅宮辰夫をはじめ、当時の東映を代表する豪華俳優陣が多数出演しています。

主演の大泉新次郎を梅宮辰夫が演じ、成瀬役で若山富三郎、佐々木役で城卓矢が出演。
ヒロイン格として、お登喜を市川和子、春江を城野ゆきが演じました。
物語の鍵を握る悪役、藤井丑松には金子信雄、広川大介には南原宏治が扮しました。
塚本秀之助には水島道太郎、北天竜には石山健二郎。
さらに、柳永二郎、名和宏、穂積隆信、御木本伸介、八名信夫、小林稔侍といった実力派俳優が脇を固めています。
* 特筆すべきは、喜劇俳優として知られる藤山寛美と、任侠映画の大スターである鶴田浩二が特別出演している点です。彼らの登場が作品にさらなる深みを与えています。

この他にも、沢彰謙、佐藤晟也、北川恵一、河合絃司、植田灯孝、関山耕司、滝島孝二、久保一、大木史朗、小塚十紀雄、須賀良、岡野耕作、志摩栄、秋山敏、土山登士幸、相馬剛三、日尾孝司、田川恒夫、野口泉、沢田浩二、木川哲也、岩本好恵、伊藤慶子、真木亜沙子、川田信一、鈴木義征、桐島好夫、山之内修、斉藤信也といった多数の俳優が出演し、作品世界を豊かにしています。

メディア展開

近年では、2022年9月9日から23日にかけて、YouTubeチャンネル「toei Xstream theater」にて期間限定で無料配信が行われ、再び注目を集めました。

まとめ

『渡世人』は、激動の昭和初期という時代背景を巧みに利用し、利権に翻弄される社会と、古き良き任侠道を愚直に守ろうとする男たちの対比を描いた作品です。梅宮辰夫を中心とした豪華キャスト陣が繰り広げる人間ドラマと、股旅情緒溢れる演出が見どころであり、東映任侠映画の歴史においても重要な一本として位置づけられています。

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