渡辺清 (政治家)

渡辺清：維新期の志士から華族議員へ至る波瀾万丈の生涯

渡辺清（わたなべ きよし、1835年4月12日 - 1904年12月30日）は、江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した、稀代の官僚、政治家です。諱を武勝、通称を清左衛門といい、東山を号しました。大村藩士として生まれ、尊王倒幕運動に身を投じ、明治維新後には政府要職を歴任。福岡県令、元老院議官、貴族院議員、福島県知事などを務め、男爵に叙せられた人物です。

大村藩士としての活動と明治維新

肥前国大村に大村藩士渡辺巌の長男として生まれた渡辺清は、若くして尊王倒幕の志を抱きました。弟の渡辺昇と共に、藩内の佐幕派粛清を藩主に進言するなど、明治維新において重要な役割を果たしました。鳥羽・伏見の戦い直前には、大津において旧幕府軍の京都進攻を阻止するため、50名の大村藩兵を率いて奮戦。他藩の出兵が遅れる中、孤立無援の状況に陥りましたが、旧幕府軍を大軍と誤認させたことで進撃を断念させ、京都を挟み撃ちにする敵の戦略を阻止することに成功しました。この功績により、新政府から大村藩は厚遇を受けました。また、江戸城総攻撃予定日の前日には、英国公使ハリー・パークスと会見し、パークスの江戸攻撃反対の意向を西郷隆盛に伝えたとされています。これは江戸開城に繋がった重要な出来事の一つと言われています。

戊辰戦争と政府への出仕

戊辰戦争では、東征軍監や奥羽追討総督参謀として従軍し、磐城の戦いなどに参加。その功績により、賞典禄450石を与えられ、その後、三陸・磐城地域の巡察使（後に按察使）付属を兼任しました。明治維新後は政府に出仕し、民部省の要職を歴任。厳原県権知事や大蔵大丞などを務め、明治7年には福岡県令に就任しました。7年間福岡県令を務めた後、元老院議官に就任しています。

貴族院議員と晩年

戊辰戦争の功績により、明治20年に男爵を叙爵。明治23年には貴族院男爵議員に選出され、死去するまでその地位を保ちました。さらに、明治24年には福島県知事を務めています。そのほか、高等法院予備裁判官なども務めるなど、幅広い分野で活躍しました。晩年は、従三位、正三位の位階に叙され、勲四等旭日小綬章、勲二等旭日重光章など数々の勲章を受章しています。

家族関係

渡辺清の家族関係は複雑で興味深いものです。父は、大村藩士の渡辺巌。生母は清が生まれた時に亡くなっているため、大村藩士松田宣徳の妹を後妻に迎えています。前妻は、松田宣徳の次女で、清とはいとこにあたる人物でした。福岡県令時代には、処刑された加藤堅武の未亡人を後妻に迎えました。この後妻の兄弟も福岡の変に関わっており、複雑な歴史的背景が垣間見えます。清には、前妻との間に生まれた長女と二女がおり、後妻との間には養子である渡辺汀（海軍大佐）がいました。弟の渡辺昇は、大阪府知事、会計検査院長、貴族院議員などを歴任した人物です。

まとめ

渡辺清は、藩士から政府高官、地方長官、貴族院議員へと上り詰めた、稀有な経歴を持つ人物です。戊辰戦争や明治維新における活躍、複雑な家族関係、そして華族への叙爵など、彼の生涯は様々なドラマに彩られています。歴史の転換期を生きた彼の波乱に満ちた人生は、現代においても多くの示唆を与えてくれるでしょう。彼に関する更なる研究が、今後の歴史研究の発展に貢献することは間違いありません。

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