測雨器

測雨器の概要

測雨器（そくうき）は、朝鮮語で「측우기（チュグギ）」と呼ばれ、15世紀中ごろに李氏朝鮮で発明された雨量計です。これは、現存する最古の標準雨量計として知られています。この装置はシンプルな円筒形をしており、雨水を溜めてその深さを物差しで測ることで降雨量を記録しました。朝鮮の各地に設置され、厳格な制度の下で降雨量の測定が行われました。観測は1442年に始まりましたが、戦乱によって途絶えることもありました。その後、朝鮮王朝が終焉を迎えると、近代的な気象観測に取って代わられました。

現在、韓国の宝物第561号として指定されているのは、1837年に作られた錦営測雨器（금영측우기）だけです。この器具は、以前は忠清南道公州観察司に設置されており、「錦営」は彼らが住んでいた庁舎を指しています。また、その基礎となる測雨台（측우대）もいくつかが現存しています。

歴史的背景

李氏朝鮮時代、王朝は農業国家であったため、自然現象に対する関心が高く、特に気象や天文に基づく知見が重要とされていました。干ばつや洪水などの自然災害は、天の意志として捉えられ、統治者の役割として気象観測が重視されていました。

このような流れの中、世宗の治世（1418年 - 1450年）に入ると、1441年には降雨量を測定するための器具と台座が開発されることになります。従来の方法では土を握って湿り気を調査する形でしたが、これでは正確な降雨量を測ることができませんでした。世宗はこの問題を解決するために、書雲観に新たな測定器の開発を命じました。

新しく開発された測雨器は、1442年に正式に制度化され、各道や県に設置されました。この観測制度は、当時の科学的方法に通じるものでした。

気象観察の制度と運用

世宗代に制定された観測制度では、雨量の測定は重要な職務とされました。雨が降り終わるたびに、測定者は周尺を用いて水深を記録し、その際に降雨の開始と終了時刻を記録していました。降雨の程度は「微雨」から「暴雨」までの8段階に分類され、これらのデータは租税徴収の判断のために使用されました。

英祖代以降でも観測制度は受け継がれ、具体的な記録が残されています。この時期、観察結果は厳粛に行われ、怠慢に対しては罰が科せられることもありました。観測結果は記録され、定期的に上位機関に提出されていました。

測雨器の形状と科学的評価

初期の測雨器は鋳鉄製で、当初は必要以上に大きかったため、後に改良が加えられました。英祖の時代には標準化された測雨器の設計が進められ、色々な器具も改良されていったと考えられています。

測雨器は韓国科学史における「黄金時代」を象徴するものであり、この時代に多くの技術的革新がありました。他国における気象観測と比較しても、独自の方法論が確立されていたことが指摘され、測雨器はその代表的な例とされています。

現存する遺物と意義

和田雄治が行った測雨器に関する調査や研究により、測雨器の実態が明らかになりました。彼は日本へ帰国する際に持ち帰った"錦営測雨器"が唯一の現存する測雨器とされ、これは大きな学術的価値があります。その他にも古い測雨台が現存しており、これも貴重な資料です。

測雨器は、ただの雨量計としての役割を果たすだけでなく、韓国の科学技術史の一部として重視されています。雨の計測を通じて古代の人々の生と信仰、そして王の権力の象徴ともなり、社会におけるその重要性は計り知れません。5月19日は韓国で「測雨器発明の日」として記念されています。これにより、測雨器は常に韓国の人々にとって特別な存在としての位置を保ち続けています。

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