湛如

湛如（たんにょ）

湛如は、江戸時代中期に生きた浄土真宗の僧侶であり、浄土真宗本願寺派の第16世宗主という重要な地位にありました。西本願寺の住職も兼務し、宗門において大きな影響力を持っていました。諱は光啓、信曉院という院号を持ち、法印大僧正という僧位にありました。

生涯

第14世宗主である寂如の10男として生まれました。しかし、兄弟の多くが早世したため、寂如が婿養子に迎えた住如が新門跡となっていました。そのため、湛如は後に姉婿である住如の養子となります。

宗主であった住如の死去に伴い、24歳という若さで宗主の座を継承しました。しかし、寛保元年（1741年）6月、病のためわずか3年で急逝しました。子はいませんでした。正室である治子女王（閑院宮直仁親王の長女）は、湛如の死後に出家しています。

湛如の死後、弟の静如が跡を継ぎましたが、さまざまな問題が発生しました。そのため、寛保3年（1743年）に教団は寂如の弟である寂円の子、寂峰を第17世宗主である法如として迎えました。この経緯から、静如は本願寺の歴代宗主には含まれていません。

死因

幼少の頃から病弱であったとされ、宗主就任時には肺結核を患っていたといわれています。26歳という若さで急逝した原因は、従来「病死」とされてきましたが、近年の歴史研究では自害（自殺）であったという見方が有力視されています。

本願寺と親交の深かった茶道、薮内流に伝わる『薮内歴代調』には、当時の状況を伝える記述があります。そこには、湛如の正室である治子女王が徳川家から嫁いできたこと、湛如が非常に美男子であったため夫婦仲睦まじかったものの、その後、何らかの事情により湛如が自害したことが記されています。

自殺に至った背景には、湛如の病臥中に、正室やその実家である閑院宮家が病気平癒のための祈祷を行ったことがあります。浄土真宗では神祇不拝の教義があり、この行為はそれに反するとされました。当時の能化であった法霖は、宗主自らが祈祷によって病気が平癒したとなれば、宗義に混乱が生じると指摘し、宗主自らが自害することを勧めたとされています。湛如は、宗門の混乱を避けるため、自ら命を絶つことを選びました。法霖自身も、湛如の死後、後継者問題の処理を見届けた後、自害しています。

従来、本願寺では宗主の自害は恥であるとして、その死因を伏せてきたとされています。しかし、近年では、自害に至った経緯やその意義を改めて検証し、公にしようとする動きも出てきています。

湛如の短い生涯は、宗門の危機を一身に引き受け、自らの命を絶つことで宗門を守ろうとした、悲劇的な宗主の姿を伝えています。

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