湯ノ口温泉

湯ノ口温泉について

湯ノ口温泉は、三重県熊野市（旧南牟婁郡紀和町）に位置する、歴史と自然に恵まれた温泉地です。その泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物泉で、体を芯から温める効果が期待できます。

温泉街の様子

湯ノ口温泉の温泉街は、北山川の美しい流れを望む場所にあります。鉄筋コンクリート造りの「入鹿温泉ホテル瀞流荘」と、そこから少し山に入った場所にある「湯元山荘湯ノ口温泉」の2軒の旅館が点在しています。この2つの旅館の間は、かつて鉱山で使用されていた鉄道の廃線跡を活用した「鉱山トロッコ電車」で移動することができ、約10分で両施設を結んでいます。

特に「湯元山荘湯ノ口温泉」は、湯治場としての機能も備えた、山間にあるひっそりとした温泉地です。自然に囲まれた静かな環境で、心身ともにリフレッシュできるでしょう。

湯ノ口温泉の歴史

湯ノ口温泉の開湯は、約700年前に遡ります。後醍醐天皇の指示でこの周辺の金山を開発した際に発見されたと伝えられており、南北朝時代には既に温泉地として開かれていました。しかし、その後の鉱山開発の影響で、昭和初期には温泉が枯渇してしまいました。

その後、1978年（昭和53年）に鉱山が閉山した後に実施されたボーリング調査によって、地下1300mの地点で新たな源泉が発見され、1979年（昭和54年）に「湯元」が営業を開始し、湯ノ口温泉は見事に復活を遂げました。鉱山開発によって温泉が枯渇した例としては、他に福島県のいわき湯本温泉などが挙げられます。

また、湯ノ口温泉は歴史的な出来事にも関わっています。1992年（平成4年）には、元イギリス人捕虜のグループ「イルカボーイズ」が慰霊のために来日した際、瀞流荘に宿泊しました。1997年（平成9年）には、国民保養[[温泉地]]に指定され、その価値が広く認められました。

2015年（平成27年）には、「湯元山荘湯ノ口温泉」が木造平屋建てで新築され、新たなスタートを切りました。それまで使用されていた旧宿は取り壊され、新しい施設の駐車場として利用されています。

アクセス情報

湯ノ口温泉へのアクセスは、JR紀勢本線の熊野市駅または阿田和駅から熊野市・御浜町広域バスに乗り、「瀞流荘」で下車します。そこから「鉱山トロッコ電車」に乗り換えて約10分で到着します。

紀州鉱山と鉱山トロッコ電車

湯ノ口温泉の歴史と深く関わっているのが、かつてこの地域で栄えた「紀州鉱山」です。石原産業が運営していたこの鉱山は、銅鉱石などを採掘していましたが、1978年に閉山しました。「鉱山トロッコ電車」は、この紀州鉱山の鉄道の一部を再活用したものです。このトロッコ電車は、かつて鉱山で使われていたトロッコを観光用に改良したもので、現在はバッテリー機関車が使用されています。開業当初は架線集電方式でしたが、観光用として1987年から試験運行が開始され、1989年から通年運行されるようになりました。軌間は610mmで、旧小口谷駅構内に設けられた瀞流荘駅と、旧湯ノ口駅である湯ノ口温泉駅の間を運行しています。

駅間の多くはトンネル区間となっており、複線断面のトンネルが特徴的です。車両には空気バネなどがなく、車輪の振動が直接座席に伝わるため、独特の乗り心地が楽しめます。料金は片道270円です。2001年（平成13年）には脱線事故が発生し、一時運行を休止したこともありましたが、現在は安全対策を徹底し運行を続けています。また、2016年（平成28年）には、テレビアニメ『サザエさん』のオープニング映像に登場し、話題となりました。

しかし、2024年12月現在、施設の安全点検のため、トロッコ電車は当面の間運休となっています。運行再開の情報については、公式サイトなどでご確認ください。

湯ノ口温泉は、豊かな自然と歴史が融合した魅力的な温泉地です。トロッコ電車での移動や、静かな山間の温泉で、心身ともにリフレッシュしてみてはいかがでしょうか。

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