湯殿山神社

湯殿山神社の概要

湯殿山神社は、山形県庄内地方に広がる出羽三山（月山、羽黒山、湯殿山）の一つ、湯殿山の中腹に鎮座する神社です。月山から西へ約8km、梵字川沿いに位置し、古くから修験道を中心とした山岳信仰の場として、現在も多くの人々が訪れます。

特筆すべきは、本殿や社殿を持たない点です。湯殿山そのものが神の鎮まる山として崇められ、人工的な信仰の場を設けることが禁じられてきたためです。これは、山岳信仰の原初的な形を今に伝えるものと言えるでしょう。

神仏習合と湯殿山

明治以前の神仏習合の時代には、羽黒山は観音菩薩、月山は阿弥陀如来、葉山や薬師岳は薬師如来とされ、それぞれ過去・現在・未来を司ると考えられていました。一方、湯殿山はこれらの三山を超越した存在として大日如来とされ、特別な扱いを受けていました。

出羽三山では、観音菩薩、阿弥陀如来、薬師如来の導きにより、現世・過去・未来の三関を乗り越え、大日如来の境地に至る「三関三渡」の修行が行われました。この修行では、裸足で御神体である湯殿山に登拝することが、大日如来と一体となる行為として非常に重要視されました。また、村山地方では、現世利益の神として病気平癒、水利、先祖供養のために参拝し、15歳になると「御山参り」として詣でる風習がありました。江戸時代には、これらの参拝者による講が組織され、出羽国をはじめ、新潟や関東からも多くの人々が訪れました。

「問わず語らず」の戒律

湯殿山には、「問わず語らず」という厳しい戒律があり、その詳細を口外することは禁じられてきました。現在も、御神体の写真撮影は厳禁とされています。俳聖 松尾芭蕉も、湯殿山を訪れた際に「語られぬ 湯殿にぬらす 袂かな」という句を詠み、その神秘性を表現しています。

湯殿山神社の本宮では、参拝時に裸足になり、禊を受ける必要があり、俗世とは隔絶された神聖な場所であることが窺えます。

近代社格と現在

近代社格制度においては、昭和7年に国幣小社に列格し、戦後は神社本庁の別表神社に指定されています。

祭神

湯殿山神社の祭神は以下の通りです。

大山祇神（おおやまつみのかみ）
大己貴命（おおなむちのみこと）
少彦名命（すくなひこなのみこと）

境内

湯殿山神社の境内には、以下の施設があります。

御神体（詳細は「問うな語るな」とされており不明）
禊場：ここで下足を脱ぎ、紙人形を用いて禊を行います。この過程を経ないと神社には入れません。

注意点として、通常の神社にある本殿や拝殿は湯殿山神社には存在しません。

また、参籠所、大鳥居、売店・食堂などの施設も境内にあります。

御滝神社

湯殿山神社の奥には、流れ落ちる滝を御神体とする御滝神社があります。かつては不動尊として、現在は瀬織津姫神として祀られており、滝行を行う修験者の姿も見られます。この滝からの流れが神橋に至るまでの両岸には13の末社があり、これらを巡拝することを「お沢駆け」といいます。

アクセス

車

国道112号月山道路または六十里越街道から湯殿山有料道路に入り、終点まで進みます。自家用車の乗り入れは禁止されているため、湯殿山神社参籠所駐車場に車を停め、参詣用シャトルバスまたは徒歩で湯殿山神社に向かいます。

バス

鶴岡駅からあさひ交通バスで湯殿山終点まで行き、そこから参詣用シャトルバスに乗り換えるか、徒歩で湯殿山神社へ向かいます。

徒歩

月山山頂から登山道があり、徒歩で約2時間程度で到着します。

関連情報

出羽三山（月山神社、出羽神社）
岩根沢三山神社
湯殿山4ヶ寺（神仏分離以前の湯殿山別当寺）
湯殿山神社 (西川町本道寺)（旧本道寺）
湯殿山神社 (西川町大井沢)（旧大日寺）
大日坊
注連寺
国道112号
月山道路
大越 (山形県の峠)
湯殿山有料道路
山形自動車道
湯殿山インターチェンジ

湯殿山神社は、その神秘的な雰囲気と深い歴史を持ち、訪れる人々を魅了し続けています。

もう一度検索