湯殿山神社 (西川町本道寺)

湯殿山神社（ゆどのさんじんじゃ）

湯殿山神社は、山形県西村山郡西川町本道寺に位置する神社です。元々は真言宗の寺院であり、本道寺という名前で知られていました。全国に存在する他の湯殿山神社と区別するために、「口ノ宮湯殿山神社」とも呼ばれます。かつては無格社でしたが、その歴史は深く、出羽三山信仰の中心地の一つとして重要な役割を果たしてきました。

祭神

この神社の主な祭神は、湯殿山の神々である大山祇神（おおやまつみのかみ）、大己貴命（おおなむちのみこと）、少彦名命（すくなひこなのみこと）の三柱です。さらに、月読命（つきよみのみこと、月山の祭神）と伊弖波神（いではのかみ、羽黒山の祭神）も配祀されています。これらの神々を祀ることで、出羽三山の信仰を一身に集める場所となっています。

歴史

明治初頭まで、この地は神仏習合の修験道の山として、羽黒派修験の拠点でした。特に、月光山本道寺は、出羽三山湯殿山派の別当寺四ヶ寺の一つとして重要な役割を担っていました。神社の由来によると、本道寺は、大同4年（809年）に、湯殿山を訪れた空海によって開基されました。空海はこの地で、霧の中で光る老木から大日如来と大黒天の二体の仏像を造り、庵に安置したと伝えられています。

空海がこの地を去る際、従僧の一人に「ここは湯殿山大権現へと通ずる本道である。私の代わりにここを守り、湯殿山への代参を行うべし。そうすれば大権現の霊験が世に現れるだろう」と遺言したとされています。当初、二体の仏像が安置された庵は「月光山光明院」と称されました。

その後、天長3年（827年）に湯殿山大権現を勧請して伽藍が造営され、それ以降、月光山本道寺として知られるようになりました。本道寺は、空海の遺訓に基づき、湯殿山の中心的な別当寺として、四ヶ寺を統括する役割を果たしました。

領主からの崇敬

本道寺は、歴代の領主からも深く崇敬されました。古くは大江氏の流れを汲む寒河江氏、そして最上氏が庇護しました。江戸時代には、梁間18間、桁68間という東北地方でも最大級の伽藍を誇り、湯殿山として徳川氏の七祈願所の一つ、勅許による勅願寺にもなっていました。

本道寺は「出羽三山参拝の本道」とされ、本道寺を通る六十里越街道は多くの参拝者で賑わいました。街道沿いの集落は、特に参拝客で賑わう夏の期間の稼ぎだけで一年を過ごせたほど繁栄していたと言われています。

戊辰戦争と神仏分離

明治元年（1868年）、本道寺周辺は戊辰戦争の激戦地となりました。天童藩を制圧した新政府軍と、旧幕府軍との間で激しい戦闘が繰り広げられました。旧幕府軍の敗走後、本道寺は将軍家の祈願所であったために新政府軍の攻撃を受け、壮大な伽藍は焼き払われてしまいました（入間森畑の戦い）。

さらに、明治7年（1874年）に神仏分離令が発せられると、本道寺は寺号を廃止し、口ノ宮湯殿山神社として新たな道を歩むことになりました。戊辰戦争で焼失した伽藍は、浄財によって明治22年（1890年）に再建されましたが、その規模は往時に比べて大幅に縮小されました。

神社の再興と現在

1877年（明治10年）、山形県初代県令三島通庸により、口ノ宮湯殿山神社から分霊され、山形市旅篭町に県社湯殿山神社が建立されました。現在、旧県会議事堂（文翔館）裏に現存する湯殿山神社は、この分霊に由来します。

神仏分離の際、戦火を免れた本道寺の寺宝は、出羽三山から分離した大日坊や注連寺などの寺院に引き取られましたが、その多くが散逸してしまいました。しかし、本道寺の仁王像は、河北町にあった弥勒院に引き取られた後、仙台ホテルに売却されましたが、2005年に口ノ宮湯殿山神社に寄贈され、現在は拝殿に安置されています。また、1989年には、空海坐像を栃木県内の古美術商から買い戻しています。

境内

現在の湯殿山神社の境内には、以下のような見どころがあります。

- 鳥居：神社の入り口を象徴する鳥居が参拝者を迎えます。
- 山門：「湯殿山」の額が有名で、瑞鳳寺の高僧であった南山の筆によるものです。
- 拝殿：参拝を行うための建物で、再建されたものです。
- 本殿：神様が祀られている中心的な建物です。
- 石仏：境内には、歴史を感じさせる石仏が点在しています。
- 仏足石：日本国内に現存する三尊のうちの一尊であり、貴重な文化財です。
- 十二面山神・地蔵尊：神仏習合の歴史を今に伝える存在です。
- 八日塔碑、太神宮碑、金比羅大権現碑、百万遍供養塔、湯殿山供養塔など、様々な碑が境内にあります。

湯殿山神社は、その歴史と文化的な価値から、多くの人々にとって重要な場所となっています。

脚注

詳細な情報は、以下の公式サイトで確認できます。

外部リンク

- 西川町ホームページ

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