湯沢温泉 (関川村)

湯沢温泉の概要

新潟県岩船郡関川村の豊かな自然に抱かれた湯沢温泉（ゆさわおんせん）は、清流・荒川のほとり、湯蔵山の山麓に位置する温泉地です。近隣の高瀬温泉、雲母（きら）温泉、鷹ノ巣温泉、桂の関温泉と共に「えちごせきかわ温泉郷」を形成しており、この地域でも特に長い歴史を持つ湯として知られています。

泉質とその特徴

湯沢温泉では、温泉地の中心施設である共同浴場「湯沢共同浴場」で入浴が可能です。ここでは、複数の源泉を混合して使用しており、それぞれの源泉が異なる特性を持っています。

1号井: 単純温泉に分類され、低張性で中性の低温泉（源泉温度28.7℃）です。刺激が少なく、肌に優しい湯です。
2号井: ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉（低張性弱アルカリ性高温泉）で、源泉温度は54.6℃です。温浴効果が高く、肌をなめらかにする効果も期待されます。
3号井: 含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉（低張性弱アルカリ性高温泉）で、源泉温度は54.9℃です。硫黄成分を含む複雑な成分構成で、様々な効能が期待されます。

これらの個性豊かな源泉が混合されることで、湯沢温泉ならではの湯が生まれています。

温泉地の現状と歴史的背景

荒川の右岸側に開けた湯沢温泉は、共同浴場「湯沢共同浴場」が地域の温泉文化を支えています。かつては湯治客を迎える数軒の旅館が並んでいましたが、2022年8月に発生した局地的な豪雨による土砂災害により、当時唯一営業を続けていた「仲屋旅館」が壊滅的な被害を受け、やむなく廃業となりました。この出来事は温泉地の景観と機能に大きな影響を与えています。

湯沢温泉は、歴史の舞台にも登場します。江戸時代末期の「桜田門外の変」の実行犯の一人とされる水戸藩浪士、関鉄之介がこの地で捕縛された史実があり、作家・吉村昭氏の小説『桜田門外ノ変』にもその関連が描かれています。

伝説と歴史の歩み

湯沢温泉は、えちごせきかわ温泉郷の中でも最も古い開湯伝説を持つとされています。伝えられるところによれば、今から遡ることおよそ800年前、鎌倉時代の頃にその歴史が始まったとされます。須貝刑部という人物が、傷を負った熊が湧き出る泉で傷を癒している様子を見て、これが温泉であると気づき湯屋を設けたのが起源であるという伝説が残されています。

歴史的な文献にも湯沢温泉の存在を示唆する記述が見られます。慶長2年（1597年）に作成された越後国の絵図には、温泉地であることを示す「湯」の流れがある村として「遊村」と記されており、これが現在の湯沢を指していると考えられています。また、正保年間の越後国絵図の控え（1645年頃）には明確に「湯沢村」の名が記されています。さらに、『一本堂藥選』（1738年）のような江戸時代の薬物に関する書物にも湯澤の湯としてその名が見えることから、古くから効能のある湯として知られていたことがうかがえます。

一部の研究では、江戸時代の温泉番付に見られる「越後塩沢の湯」が関川村の湯沢温泉であるという説が唱えられています。また、吉田氏による記録では、湯澤温泉のことと思われる薬師湯の湯温が摂氏約54.4度（華氏130度）と記されており、現在の源泉温度とも近い値を示しています。これらの記録は、湯沢温泉が長い歴史の中で人々に利用されてきた証と言えるでしょう。

アクセス情報

湯沢温泉へのアクセスは、鉄道、高速バス、自家用車など複数の手段が利用可能です。

公共交通機関: JR米坂線を利用する場合は越後下関駅で、高速バスZao号を利用する場合は「下関」バス停（新潟交通観光バス下関営業所前）で下車します。駅やバス停からは、レンタサイクル「湯～チャリ」（乗り捨て可）や、平日のみ運行の新潟交通観光バスの路線バスを利用できます。
* 自動車: 日本海東北自動車道の荒川胎内インターチェンジを利用するのが便利です。インターチェンジからは、国道113号を経由して約16キロメートル、およそ20分で温泉地に到着します。

湯沢温泉は、古の伝説と歴史、個性豊かな泉質、そして近年の災害からの復興という多面的な顔を持つ温泉地です。共同浴場を中心に、静かな環境で湯を楽しむことができます。

もう一度検索