湯顕祖

湯顕祖：明代を代表する劇作家

湯顕祖（とう けんそ、1550年9月24日 - 1616年7月29日）は、中国明代の劇作家であり、「中国のシェイクスピア」とも称されるほどの人物です。字は義仍といい、撫州府臨川県の出身です。祖父は湯懋昭、父は湯尚賢という家系に生まれました。

生涯

若い頃からその文才は高く評価され、1570年には21歳で科挙の郷試に合格しました。しかし、時の宰相である張居正と対立したことが原因で、会試にはなかなか合格することができませんでした。張居正の死後、1583年になってようやく会試に合格を果たします。

1584年には南京の太常寺博士に就任しました。当時、南京では王世貞を中心に古文辞を尊ぶ運動が盛んでしたが、湯顕祖はこの動きに反対しました。その独自の文学観は、当時の主流とは一線を画していました。

1591年、「論輔臣科臣疏」を提出し、宰相の申時行らを弾劾したことで、雷州半島の徐聞県の典吏に左遷されるという不遇を経験します。1年半後には許され、浙江省処州府の遂昌県の知県に任命されましたが、宦官による銀山の私物化に反対したため、1598年に官職を辞し、故郷の臨川に『玉茗堂』を構えて隠棲しました。この間も創作活動を続け、後世に名を残す作品を多く生み出しました。

作品の特徴

湯顕祖の作品は、当時の崑劇の曲律には合わない部分が多く、歌唱には不向きであるとされてきました。そのため、彼の作品はレーゼドラマ（朗読劇）として鑑賞されることが多かったようです。湯顕祖自身も、演じやすさよりも文学的な効果を重視していたとされ、「演者の喉を切っても構わない」と言ったという逸話も残っています。

彼の戯曲は、夢を主要なテーマとして扱っていることが特徴で、特に代表作である4つの戯曲は「玉茗堂四夢」と呼ばれています。

代表作

紫釵記（しさいき）: 1586年から1587年頃に完成したとされるこの作品は、唐の伝奇小説『霍小玉伝』を基にしています。
還魂記（かんこんき）（牡丹亭とも呼ばれる）: 1592年に完成したとされるこの作品は、湯顕祖の代表作であり、明代後期の伝奇の傑作として知られています。
南柯記（なんかき）: 1606年に完成したこの作品は、唐の伝奇小説『南柯太守伝』を基にしています。
邯鄲記（かんたんき）: 1606年から1607年頃に完成したとされるこの作品は、唐の伝奇小説『枕中記』を基にしています。

これらの作品に加えて、初期の戯曲として『紫簫記』があります。これも『霍小玉伝』を基にしています。

湯顕祖の作品は、その文学的な深さと、夢をモチーフにした幻想的な世界観で、今日でも多くの人々に愛されています。彼の作品は、単なる娯楽ではなく、人間の内面や社会の矛盾を描き出し、見る者に深い感動と考察を与えます。

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