源頼実

源頼実（みなもと の よりざね）は、平安時代中期に活躍した官人であり、歌人としても名を残しました。彼は、源頼国（みなもとのよりくに）の三男として生まれ、当時の中級貴族を中心とした歌人グループ「和歌六人党」の一員として、その才能を発揮しました。

頼実は、歌道に対する情熱にあふれており、叔父である源頼家（みなもとのよりいえ）と共に、和歌六人党を構成しました。長元8年（1035年）には、蔵人所雑色（くろうどどころのぞうしき）という役職にありながら、「藤原頼通家歌合」（「関白左大臣頼通歌合」）に出席。同じく雑色であった藤原経行（ふじわらのつねゆき）や源斉頼（みなもとのただより）らと共に歌を詠みました。この歌合の様子は、「賀陽院水閣歌合」として『類聚歌合巻』に記録されています。

また、頼実は源師房（みなもとのもろふさ）の邸宅である土御門殿（つちみかどどの）によく出入りしていたことが知られています。長暦2年（1038年）および長久2年（1041年）には、「権大納言師房歌合」に参加したほか、「橘義清歌合」などにも歌を寄せています。長久4年（1043年）には蔵人に任じられましたが、翌長久5年（1044年）に30歳という若さで亡くなりました。

『尊卑分脈』には、頼実の子である頼季（よりすえ）が、源頼信（みなもとのよりのぶ）の三男である頼季と同一人物であるという説が記されており、子孫は井上氏の系譜に繋がるとされていますが、詳細については不明な点が多いです。

頼実は、『袋草紙』に、自身の命と引き換えに秀歌一首を得られるよう住吉大社に祈ったという逸話が残されています。この逸話は広く知られており、彼の歌に対する情熱を物語っています。彼の詠んだ歌は、『後拾遺集』以下の勅撰和歌集に計7首が入集しており、歌集として『頼実集』（『故侍中左金吾集』）があります。

住吉大社に祈請した後に得られた歌は、以下の歌であったと伝えられています（『袋草紙』『無名抄』『今鏡』）。

例歌

「心にもあらで憂き世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな」

この歌は、自身の短い命を悟りながらも、美しい月を愛おしむ心情を詠んだものであり、彼の歌人としての才能と繊細な感情を伝えています。

参考文献

松村博司 『栄花物語全注釈』六 （1976年、角川書店）
久保田淳・平田喜信校注『後拾遺和歌集』 （1994年、岩波書店）
藤岡忠美校注『袋草紙』 （1995年、岩波書店）
* 黒板勝美編『新訂増補国史大系 第60巻上 尊卑分脈 第3篇』（1966年、吉川弘文館）

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