滝田ゆう

滝田ゆう：昭和の東京を描いた漫画家・エッセイスト

滝田ゆう（1931年12月26日 - 1990年8月25日）は、昭和の東京を舞台にした漫画、エッセイで知られる日本の漫画家、エッセイストです。本名は瀧田祐作。

生い立ちと漫画家デビュー

滝田ゆうは、東京市下谷区坂本町（現在の東京都台東区下谷）で指物職人の家に生まれました。幼い頃に実母を亡くし、叔父の家に養子に入り、旧私娼街・玉の井で育ちました。國學院大學文学部を中退後、漫画家・田河水泡に師事し、1952年に『漫画少年』でデビュー。しかし、当初は漫画だけでは生活できず、キャバレーの美術部で看板を描いて収入を得ていたそうです。

貸本漫画から『ガロ』へ

1956年、田河水泡の紹介で東京漫画出版社の貸本漫画を中心に執筆を開始し、漫画家として本格的に活動を始めます。少女[[漫画]]などを手がけながら、1959年に家庭漫画『カックン親父』を発表し、初のヒット作となりました。その後、『ダンマリ貫太』などの人気シリーズを発表。1967年には『月刊漫画ガロ』に『あしがる』を発表し、つげ義春、林静一ら同誌の掲載陣に加わり、人気漫画家としての地位を確立しました。

『ふきだし』の挿絵と『寺島町奇譚』

滝田ゆうの作品の特徴として、漫画のふきだしに登場人物の心境や状況を表す挿絵を描くという手法があります。殺気を感じた時に「出刃包丁」、猫のピンチに「三味線」といった具合に、具象的なものから抽象的なものまで、様々な挿絵が描かれました。

1968年からは『ガロ』に代表作となる『寺島町奇譚』を連載。自身の少年時代をモチーフとした半自伝的作品で、綿密な作画で作者の内面を表現し、私漫画とも呼ばれました。永井荷風が外部の視点から玉の井を描いたのに対し、滝田ゆうは玉の井に在住していた人物の視点から描いた点が特徴です。

文筆活動と晩年

『寺島町奇譚』以降、滝田ゆうは漫画誌から文芸誌へと活動の場を移し、エッセイやイラストなども手がけるようになります。テレビ番組や雑誌のグラビアにも頻繁に出演し、親しみやすい風貌で人気を集めました。

1982年に脳血栓で倒れますが、休養後に復帰。好きな酒を絶ってエッセイ、イラスト、画文集などを発表しましたが、左半身に麻痺が残り、以降コマ漫画は手掛けませんでした。

滝田ゆうは、戦災で消失してしまった戦前の玉の井を生涯追い求め続け、作品を通して失われた故郷を再生し続けました。1990年8月25日、肝不全のため58歳で亡くなりました。

主な作品

『寺島町奇譚』
『ぼくの昭和ラプソディ』
『滝田ゆう落語劇場』
『泥鰌庵閑話』
『昭和夢草紙』
『怨歌劇場（野坂昭如＋滝田ゆう）』

受賞歴

1974年：文藝春秋漫画賞
1987年：日本[[漫画家協会賞]]大賞
* 1990年：勲四等瑞宝章

滝田ゆうの作品は、昭和の東京の情景を豊かに描き出し、多くの人々に愛されています。彼の作品を通して、失われた昭和の風景を追体験してみてはいかがでしょうか。

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