漢の衛氏朝鮮遠征

漢の衛氏朝鮮遠征

紀元前109年から紀元前108年にかけて、前漢と衛氏朝鮮の間で行われた戦争です。この戦争は、前漢が勝利し、衛氏朝鮮は滅亡しました。

戦争の背景

前漢は、紀元前202年に高祖劉邦によって建国されました。その功臣の一人である盧綰が燕王に封じられましたが、後に反乱を疑われて匈奴に逃亡。その部下であった衛満が朝鮮に移り、箕子朝鮮を滅ぼして衛氏朝鮮を建国しました。

衛満は、漢の恵帝・呂后時代に遼東太守の仲介で漢の外臣となり、漢から「守備を固めて異民族の侵入を防ぐこと」「周辺国が漢に入朝することを妨げないこと」を条件付けられました。しかし、衛満は周辺国に侵攻し、文帝の時代には朝鮮征討が議論されましたが、実行には至りませんでした。

開戦

時代が下り、衛満の孫である衛右渠が衛氏朝鮮の王となり、漢では武帝が皇帝となっていました。衛右渠は、周辺の小国が漢に入朝しようとするのを妨害するようになります。紀元前109年、漢は使者として渉何を派遣しますが、交渉は決裂。渉何は帰国時に朝鮮の副王を殺害し、これに怒った衛右渠が渉何を殺害したことで、ついに開戦に至りました。

武帝は、左将軍荀彘率いる陸軍と楼船将軍楊僕率いる水軍の二方向から朝鮮へ侵攻させました。しかし、両軍は衛右渠の激しい抵抗に遭い、初戦は敗北します。その後、王険城に迫りますが、衛右渠の抵抗は続き、荀彘と楊僕が互いに手柄を争ったため、漢軍内部での連携も欠き、戦闘は長期化しました。

紀元前108年になると、荀彘が楊僕を捕らえ、指揮系統を一本化したことで漢軍が優勢になります。衛右渠は家臣の参によって殺害され、参は漢軍に降伏。しかし、王険城ではその後も抵抗が続きました。

戦後

王険城を陥落させた後、武帝は、その地に楽浪郡・玄菟郡・臨屯郡・真番郡の四郡（漢四郡）を設置し、直轄支配としました。

凱旋した荀彘と楊僕でしたが、荀彘は楊僕を独断で捕らえた罪で処刑、楊僕は多数の兵を失った責任を問われ庶民に降格となりました。

参考文献

史記 朝鮮列伝第五十五
漢書 西南夷両粤朝鮮伝第六十五
三国志 烏桓鮮卑東夷伝
西嶋定生『秦漢帝国』講談社、1997年
太田幸男「前漢」『中国史 先史〜後漢』
西江清高、竹内康浩、平㔟隆郎、太田幸男、鶴間和幸 著、松丸道雄、池田温、斯波義信、神田信夫、濱下武志 編『中国史 先史〜後漢』 1巻、山川出版社、2003年
鶴間和幸『中国の歴史3 ファーストエンペラーの遺産:秦漢帝国』講談社
田中俊明 著「第一章 古朝鮮から三国へ」、武田幸男 編『朝鮮史』山川出版社

関連項目

* 燕・古朝鮮戦争

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