漫遊 (鉄道車両)

漫遊（まんゆう）とは、1995年に東日本旅客鉄道（JR東日本）が誕生させた団体臨時列車用の和式気動車です。当時のジョイフルトレインの一種であり、その後の名称変更「ふるさと」についてもこの項目で詳しく解説します。

JR東日本水戸支社では、1991年から運用していた洋風電車「リゾートエクスプレスゆう」に続く車両として、非電化区間での運用が可能な和式車両のニーズが高まっていました。これに応える形で、新たな座敷列車として開発されたのが「漫遊」です。列車名は、茨城県にゆかりの深い歴史上の人物にちなんだ『水戸黄門漫遊記』から名付けられました。主に水郡線など、多くの非電化路線での使用を想定し、当時使用されていたキハ40形1両とキハ48形2両、合計3両の気動車を種車として改造されました。この改造により、これらの車両はキハ40系列では初めてとなる、グリーン車区分であるキロ40形およびキロ48形となりました。

編成は、キロ48 1（旧キハ48 534）が1号車「華-HANA-」、キロ48 2（旧キハ48 548）が2号車「風-FU-」、キロ40 1（旧キハ40 2138）が3号車「月-GETSU-」という3両で構成されていました。基本的な運用は3両一体でしたが、状況によってはキロ40 1+キロ48 1やキロ48 1+キロ48 2といった2両編成での運行も可能なように設計されていました。車内は、数寄屋造りを思わせる雰囲気が特徴で、高床式の完全な畳敷きとなっており、一般的な車両に設けられている通路はありませんでした。各車両ごとに内装の装飾が異なっており、キロ48 1「華」には金屏風と朱塗りの座卓が、キロ48 2「風」には明るい木目調の内装に黒漆の座卓が、キロ40 1「月」には桐材を基調とした内装に黒漆の座卓が配され、それぞれ独自の趣を醸し出していました。快適性を高めるため、各車両にサービス電源用のインバータが備えられ、CDカラオケやビデオデッキといった娯楽設備も搭載されていました。また、化粧室はキロ48 2に、便所はキロ48 1とキロ40 1に設置されていました。

車体は、種車であるキハ40形およびキハ48形の基本的な骨格構造をそのまま利用しています。側面の窓の一部が埋め込まれたことや、塗装の変更を除けば、台車や機関などの主要機器は種車のものが引き続き使用されました。外観の大きな特徴は、各車両で色が異なるツートンカラーの塗装です。キロ48 1「華」は深緑、キロ48 2「風」は紫色、キロ40 1「月」は朱色が、それぞれ屋根を含む車体上部の約3分の2に塗られ、車体下部の約3分の1は全車両共通で金色に塗装されていました。これにより、編成全体として華やかで統一感のある印象を与えていました。窓ガラスは熱線吸収タイプに交換され、サッシ部分は黒色とされました。

「漫遊」は、JR東日本の郡山工場で改造工事が行われました。キロ48形の2両が1995年2月に、キロ40形が同年3月に完成し、1995年3月1日から営業運転が開始されました。最初の配置先は水郡線営業所でした。運用は水戸地区を中心に、非電化区間が多い東北地方へも足を延ばしました。JR線以外では、第三セクター鉄道である真岡鐵道や鹿島臨海鉄道大洗鹿島線に乗り入れた実績もあり、広範囲で利用されました。

2000年にはJR東日本仙台支社の小牛田運輸区へ転属し、愛称も「ふるさと」に改められました。2003年には普通車へ格下げされ、キロ48 1、キロ48 2、キロ40 1はそれぞれキハ48 2501、キハ48 2502、キハ40 2501と改番されました。愛称変更後は「ふるさと」として仙台地区を中心に各地で運用され、水郡線にも姿を見せました。老朽化のため、2016年8月27日・28日の「ふるさとラストラン号」をもって営業運転を終了しました。

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