リゾートエクスプレスゆう

リゾートエクスプレスゆうは、東日本旅客鉄道（JR東日本）が1991年（平成3年）から2018年（平成30年）にかけて保有していた、ジョイフルトレインに分類される電車です。特別な旅の演出を目的に改造・投入され、主に臨時列車や団体専用列車として活躍しました。

概要

この車両は、JR東日本東京地域本社と水戸支社が共同で使用するジョイフルトレインとして企画されました。1991年3月30日に、既存のサロ183形、サロ189形、サロ481形グリーン車を種車として計6両が改造され、勝田電車区に配置されました（編成番号K30）。改造工事は大井工場と大船工場で分担して行われました。水郡線のような非電化区間への乗り入れも想定し、走行中に必要な電源を供給するための専用電源車（マニ50形荷物車からの改造）も同時に準備されました。登場時は洋式の座席車でしたが、1998年（平成10年）には利用者層である高齢者からの要望を踏まえ、内装がお座敷仕様に大きく変更されました。その後も常磐線系統を中心に、関東から東北、甲信越などJR東日本管内の幅広いエリアで運用されましたが、老朽化に伴い2018年 9月6日をもって廃車となりました。

車両の特徴（改造当初）

種車からの流用は空気ブレーキ装置や電動発電機（MG）、空気圧縮機（CP）、連結器などの一部にとどまり、車体は同時期に登場した特急形電車651系をベースとした裾絞り構造の普通鋼製で、東急車輛製造で新たに製造されたものです。履歴上はグリーン車からの改造扱いですが、その実態は新製に近い車両でした。走行に関わる機器類は、当時余剰となっていた485系電車の部品が活用されており、直流・交流50Hz・交流60Hzの三電源に対応していたことから、形式番号も485系が付与されました。

外観は、大型の連続窓が特徴で、開放的な車窓を提供しました。前面は中央のピラー幅を広く取り、縦長の電照式ヘッドマークを配置。その下方には縦型の前照灯が2灯、その両脇に尾灯兼用のLED標識灯が設けられました。集電装置（パンタグラフ）はモロ484形に1基搭載されましたが、中央東線などの狭小なトンネルに対応するため設置部分の屋根が一段低くされ、信越本線横川 - 軽井沢間の急勾配区間を通過するための「横軽対策」も施されていました。重量バランスを考慮し、MGやCPなどの補助機器はクロ484形とサロ485形に分散して搭載されていました。

編成とコンセプト

この編成は、水戸地区で長年活躍した和式客車スロ81形・スロフ81形「ふれあい」の後継としての役割に加え、首都圏における新しいジョイフルトレインのシンボルとして「コンフォートクオリティ」の提供を目指しました。電源車を除く全ての車両がグリーン車扱いとされ、高い居住性が追求されました。

外部塗色は、ベースカラーにフュージョンベージュ、窓周りにフィロスブラウンを配し、窓上にはアクセントとしてペパーミントグリーンのピンストライプが入る、明るく軽快なデザインでした。

各車両（登場時）

先頭車（1号車・6号車）
乗務員室のすぐ後ろには、フリースペースの展望室が設けられ、ソファが設置されていました。ここには高さ930mm、幅2240mmという特大サイズの窓が配され、前面展望を楽しめる空間となっていました。客室内は片側通路とし、1人掛けと2人掛けの座席を交互に配置。座席は45度刻みで360度回転可能なリクライニングシートで、様々な乗車スタイルに対応できる柔軟性を持っていました。

中間車（2号車・3号車・5号車）
客室の座席は1人掛けと2人掛けで、2列と1列の配置とされました。座席自体は先頭車と同様の回転式リクライニングシートが採用されていました。

* イベント車（4号車）
定員外のフリースペースとして位置づけられ、フロア部分とドーム室で構成されていました。フロア部にはステージ、サービスカウンター、AVコントロール室が設置され、「走るディスコ」のようなユニークな演出も可能でした。壁面には折り畳み式の補助座席が10脚備えられていました。ドーム室はサービスカウンター横の階段を上がった場所にあり、1人掛けのリクライニングシートが10脚配置されていました。ドーム室の照明は足元のみとし、夜間の車窓鑑賞に配慮した設計でした。

電源車（通称：ゆうマニ）

水郡線などの非電化区間への直通運転時に、客車部分へ電力を供給するために改造された専用車両です。マニ50 2186を大宮工場で改造し、水郡線営業所に配置されました。鉄道ファンの間では「ゆうマニ」の愛称で知られていました。この車両は、リゾートエクスプレスゆう本体の廃車後、東急電鉄に譲渡され、「THE ROYAL EXPRESS」の北海道内運行時の電源車として現在も活用されています。

増結用車両

1995年（平成7年）に信越本線で運行された「臨時特急ほのぼの号」で使用するため、長野総合車両所のサロ489-1051が「ゆう」と同色に塗り替えられ、増結用車両（増3号車）として一時的に組み込まれたことがあります。

運用と終焉

リゾートエクスプレスゆうは、主に常磐線を中心とした区間で、団体や臨時の多客列車として活躍しました。過去にはスキー列車「シュプールゆう白馬号」として大糸線に入線した実績や、東北、上越、甲信越地方など、JR東日本管内の広範囲でその姿を見ることができました。1998年秋には、主な利用者層である高齢者の要望に応える形で、客室部分がお座敷仕様に再改造されました。外観や車両名、4号車のフリースペースに変更はありませんでした。この再改造後の車両は、2015年（平成27年）に予定されていた臨時快速列車「つながーるふくしま号」への充当が計画されましたが、直前で車両変更となっています。約27年間の活躍の後、車両の老朽化が進んだことにより、2018年9月5日に長野総合車両センターへ廃車回送され、翌9月6日をもって正式に廃車となりました。電源車として再活用されている「ゆうマニ」を除き、他の車両は全て解体され、現存していません。

もう一度検索