潮沢信号場

潮沢信号場：山間のスイッチバック信号場跡を訪ねて

長野県安曇野市（旧明科町）に存在した、JR東日本篠ノ井線の潮沢信号場。その歴史と役割、そして現在に残る姿について詳しく見ていきましょう。

篠ノ井線の歴史と潮沢信号場の誕生

篠ノ井線西条―明科間は、1902年の全線開通当時、潮沢川沿いの急峻な山間部を、第1、第2白坂トンネルを貫通するルートで敷設されました。しかし、高度経済成長期を迎えると、急増する輸送力に対応するため、線路改良が急務となりました。その対策として、1961年9月27日、潮沢信号場が誕生します。

シーサスクロッシングとスイッチバック

明科駅から4.8km、西条駅から4.9kmの位置に設置された潮沢信号場は、漆久保トンネルと第2白坂トンネルの間にありました。他の篠ノ井線の信号場（羽尾信号場、桑ノ原信号場）と同様に、シーサスクロッシング1基と引込線2本を備えたスイッチバック方式が採用されていました。スイッチバック方式とは、進行方向を変えるために線路を大きく蛇行させる方法で、急峻な地形に対応するのに適した方法でした。この独特の構造が、潮沢信号場を特徴付けていました。

新白坂トンネル開通と廃止

その後、より効率的な輸送ルート確保のため、新白坂トンネルの建設が決定します。この新トンネルは将来的な複線化を見越した設計でしたが、松本―篠ノ井間は田沢―明科間のみ複線化されたまま、現在に至っています。新白坂トンネルの完成により、旧線は不要となり、潮沢信号場は1988年9月10日に廃止されました。わずか27年間の歴史でした。

信号場跡と遊歩道

廃止後、旧線跡は遊歩道として整備されました。明科駅から旧第二白坂トンネルまで続くこの遊歩道は、かつての鉄道の面影を今に伝えています。潮沢信号場跡も遊歩道の一部として残され、歴史を感じさせる貴重な空間となっています。周辺は山々に囲まれた自然豊かな場所で、静かな散策を楽しむことができます。

アクセスと周辺環境

現在、潮沢信号場跡へのアクセスは、公共交通機関が通っていないため、最寄りのJR篠ノ井線明科駅から徒歩または車でのアクセスとなります。周辺には潮沢川が流れ、国道403号も走っています。かつての鉄道の面影と豊かな自然が調和した、静かで落ち着いた場所です。周辺には、第二白坂トンネル、第三白坂トンネルといった、鉄道の歴史を感じさせる遺構も存在します。

まとめ

潮沢信号場は、高度経済成長期における鉄道輸送力増強策の一環として誕生し、スイッチバック方式という珍しい構造で知られていました。短命ではありましたが、篠ノ井線の歴史を語る上で重要な役割を果たした場所と言えるでしょう。現在では、遊歩道として整備され、往時の面影を偲ばせる貴重な空間となっています。訪れる際には、かつてこの場所で活躍した鉄道の息吹を感じることができるでしょう。

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