澤村田之助 (4代目)

四代目 澤村田之助

安政4年（1857年）に生を受け、明治32年（1899年）4月3日にその生涯を閉じた四代目澤村田之助は、明治時代に歌舞伎の舞台で活躍した役者です。屋号は紀伊國屋を用い、定紋には釻菊、替紋には波に千鳥を用いていました。俳名としては、有子（ゆうし）、百山（ひゃくざん）、曙山（しょざん）などがありました。本名は、襲名後の名と同じく澤村田之助でした。

来歴

江戸の守田座の近くにあった芝居茶屋「紀の清」の子として生まれた四代目田之助は、幼くして三代目澤村田之助に師事し、役者としての道を歩み始めました。当初は澤村百之助という名で舞台に立っていましたが、後に師である三代目の養子となり、澤村家の縁者となります。

明治7年（1874年）、三代目が京橋鞘町に澤村座を開場すると、百之助もその一座に加わり、舞台に立ちました。しかし、この澤村座は同年12月には早くも閉鎖を余儀なくされます。澤村座の閉座後は、百之助は活動の場を移し、中村座や都座といった他の劇場で研鑽を積み、役者としての技芸を磨いていきました。

そして、明治14年（1881年）、名跡である四代目澤村田之助を襲名します。この襲名を機に、彼は歌舞伎における女役の最高峰とされる立女形としての地位を確立し、当時の歌舞伎界で重要な存在となっていきました。

役者として活躍する傍ら、明治25年（1892年）4月には、かつて三代目が興した澤村座の再興を試みました。しかし、この再興された澤村座の興行は成功に至らず、経営は破綻し、再び劇場を維持することはできませんでした。

この興行失敗以降、四代目田之助は大きな劇場での活動が難しくなり、活動の場を旅芝居へと移します。各地を巡業する中で舞台に立ち続けましたが、明治32年（1899年）4月3日、巡業先のひとつである上州（現在の群馬県）の地で、その43歳という若さで波乱の生涯を終えました。

参考文献

* 野島寿三郎編　『歌舞伎人名事典』（新訂増補）　日外アソシエーツ、2002年

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