火焔山

火焔山の概要

火焔山（かえんざん、拼音: huǒyànshān）は、中国新疆ウイグル自治区の天山山脈付近に位置する特徴的な丘陵です。タクラマカン砂漠の北端、トルファン市高昌区の東部に広がり、その名の通り、炎を思わせる赤い地肌が印象的です。この独特な景観は、砂岩が長年の侵食によって削られて形成されました。平均標高は約500メートルで、比較的平らな山頂が長さ98キロメートル、幅9キロメートルにわたって連なっています。いくつかの場所で川によって分断されているのも特徴的です。

この地形は、もともと火山活動による溶岩が冷えて固まったものが、長い年月をかけて風雨による侵食を受けた結果、現在の姿になったと考えられています。火焔山は、非常に高温な気候でも知られており、特に夏には気温が摂氏50度を超えることも珍しくありません。このような特徴的な地形と気候から、中国国内でも人気の観光地となっています。

シルクロードとの関わり

古代、タクラマカン砂漠は東西交易における最大の難所の一つでした。しかし、商人たちは砂漠の北端を通るルート、いわゆるシルクロード天山南路を利用し、交易を行っていました。このルート上にあるオアシス都市、高昌は、交易の中継地として栄えました。交易商人たちと共に、仏教の僧侶もこの道を通って各地に仏教を広めました。火焔山の中腹には、その歴史を物語るように、ベゼクリク千仏洞があります。

ベゼクリク千仏洞は、5世紀から9世紀にかけて増築された仏教遺跡であり、70もの洞窟が連なっています。これらの洞窟内には、数多くの壁画や仏像が残されており、当時の仏教文化を今に伝える貴重な文化遺産となっています。仏教がシルクロードを通って中国に伝播する過程で、この場所が重要な拠点であったことを示しています。

文学と民話の中の火焔山

火焔山は、16世紀に呉承恩によって書かれたとされる小説『西遊記』にも登場します。この物語では、炎が燃え盛る山として描かれ、物語の重要な舞台の一つとなっています。

また、火焔山には様々な民話も存在します。漢の古い伝承によれば、かつて天界でサルの王が窯をひっくり返してしまい、その残り火が地上に落ちて火焔山になったとされています。『西遊記』では、孫悟空が閉じ込められていた八卦炉から脱出した際に壊れた八卦炉の破片が地上に落ちて火焔山になったと語られています。さらに、ウイグル人の伝承では、天山山脈に住むドラゴンが人々の子供を食い殺していたため、ウイグル族の英雄がドラゴンを切り刻み、その8つに分かれた体が火焔山になったとされています。山肌が赤いのは、その時のドラゴンの血で染まったからだと伝えられています。

これらの物語は、火焔山の特異な景観が、人々の想像力を刺激し、様々な伝説を生み出してきたことを示しています。火焔山は、自然の驚異だけでなく、歴史、文化、そして人々の創造性が交錯する場所でもあると言えるでしょう。

もう一度検索