無鉤条虫

無鉤条虫（Taenia saginata）について

無鉤条虫は、ヒトの小腸に寄生する条虫の一種です。一般に「サナダムシ」として知られ、別名カギナシサナダとも呼ばれています。主にウシを中間宿主として、人体に影響を与えます。この寄生虫は、幼虫段階では牛の体内に存在し、成虫になると人間の腸内で生育します。

形態

無鉤条虫の体は白色で、通常の長さは4メートルから10メートルに達しますが、場合によっては12メートルを超えることがあります。この条虫はテニア属の中で最大となり、片節の数は1,000から2,000に及びます。また、宿主内で最大25年もの間生き続けることがあるため、その影響も長期にわたります。頭部には特有の具がなく、代わりに4つの強力な吸盤が付いています。

生活環

無鉤条虫のライフサイクルには二つの宿主が関与します。ヒトは終宿主であり、ウシは中間宿主です。成虫は人間の小腸に寄生し、排泄された受胎片節は乾燥により裂け、虫卵を放出します。これを牛が摂取すると、虫卵は消化液によって内部の殻が分解され、六鉤幼虫として十二指腸で孵化します。孵化した幼虫は消化管壁を通過して血流に入り込み、その後筋繊維中で嚢虫（牛嚢虫）に変化します。これらの嚢虫は、ウシの肺や肝臓へと寄生することがあります。人間が感染した牛の肉を食べることで、再び無鉤条虫の成虫が形成されます。消化液によって嚢虫が分解されると、内部にある頭節が解放され、腸壁に吸着します。頭節は3か月内に5メートルに成長し、新たな片節を形成し始めます。

疫学

無鉤条虫の感染は主にアフリカ、東欧、フィリピン、ラテンアメリカの地域で見られます。この寄生虫は生の牛肉（特にタルタルステーキやユッケ）や十分に加熱されていない牛肉が感染源となります。56℃以上で加熱するか、-5℃以下で冷凍することで寄生虫は死滅します。牛肉を日常的に食べる文化圏では広く見かけるもので、米国の場合でも厳しい公衆衛生基準が設けられていることから感染率は低いものの、潜在的な感染牛が市場に出回っています。

症状

無鉤条虫に感染している人は、通常は無症候性です。しかし、寄生する個体数が多い場合には体重減少、眩暈、腹痛、さらには下痢や頭痛、吐き気、便秘、慢性の消化不良、食欲不振などの症状が出ることがあります。腸管が虫体によって閉塞される場合、手術での除去治療が必要となることもあります。また、寄生虫の抗原によってアレルギー症状を引き起こす可能性もあります。

診断

無鉤条虫の診断は主に便検査によって行われます。虫卵は他の条虫と似ているため、種の特定は難しいですが、頭節または受胎片節を調べることで識別が可能です。墨汁を注入した受胎片節からは、その分岐構造が可視化され、本種の特長として両側に12本から20本の分岐が見られます。さらに、PCR技術を用いて5.8SリボソームRNAを調べることにより、無鉤条虫の特定が可能です。

治療

無鉤条虫の治療に使われる薬剤にはプラジカンテルやニクロサミドがあり、他の条虫と同様の治療法が適用されます。

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