無頼派

無頼派概説

無頼派（ぶらいは）は、戦後の日本文学における一群の作家たちを指し、彼らは既成の文学への批判を基に独自の作風を展開しました。特に、坂口安吾の影響を受けた「新戯作派」と呼ばれる流れの中に位置づけられることが多いですが、無頼派自体には明確な同人誌や団体は存在しません。

起源と思想

「新戯作派」という名称は、坂口安吾の発言から起こりました。彼のエッセイ『戯作者文学論』では、戯作の文学においての重要性を強調しており、伝統的な漢詩や和歌に対抗する形で、江戸時代の洒落や滑稽を基盤とした戯作精神の復興を呼びかけています。これは、坂口の多くの文章に見られる「戯作復古主義」として知られる考え方に繋がります。

特に彼の作品における道化的な要素、さらには太宰治の作品に見られるパロディの影響が無頼派の特色を形作りました。また、従来の私小説的なリアリズムや、旧い文学制度への抵抗が彼らの作品に色濃く反映されています。坂口の『堕落論』や『デカダン文学論』がこの流派の意識を象徴する作品となっており、無頼派の枠組みを支える重要な要素となっています。

主な作家たち

無頼派として知られる作家の中でも特に、坂口安吾や太宰治、織田作之助が挙げられます。坂口は48歳という若さで亡くなるまで24年間創作を続け、太宰は実質13年間で12巻分を執筆しました。織田作之助は約6年半で8巻を残しました。また、石川淳や伊藤整、高見順、田中英光、檀一雄もこの流派に名を連ねることが多いです。さらに、三好十郎や平林たい子も無頼派に含まれる場合があります。

無頼派の作家たちは、旧体制の文学に対する強い批評精神を持っており、近現代日本文学史において独メ性を持った流派として注目されています。彼らの作品には個人的な苦悩や社会的な反発が色濃く描かれ、一般的な文学表現とは一線を画しています。

広がりと影響

無頼派の影響は、時代を越えて広がりを見せ、吉行淳之介や色川武大、中上健次、伊集院静などの作家にもその姿勢が見て取れます。これらの作家たちは、無頼派として広く認識されているわけではありませんが、彼らの作品にも無頼派の影響が色濃く映し出されています。

無頼派は、戦後の日本文学において重要な潮流として位置づけられ、その精神は今なお多くの作家に受け継がれています。彼らによって構築された文学への反発や批評精神は、現代においても新たな文学への可能性を提示しています。

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