焼内湾

焼内湾は、鹿児島県奄美大島西部の宇検村に位置し、東シナ海に面した湾です。湾口部の最深部は約84メートルで、屋鈍海岸などの美しい海岸線が広がっています。

湾の入り口には、奄美大島におけるハブ発祥の地とされる枝手久島があり、湾内ではクロマグロの養殖が盛んに行われています。また、湾奥の湯湾港では、真珠やクルマエビの養殖も盛んです。

湾の周辺には、奄美大島最高峰の湯湾岳がそびえ立ち、この山はシニレク、アマミコの神話で知られるほか、奄美群島国立公園特別保護地区に指定されています。焼内湾は、かつて琉球王朝時代には重要な港として機能しました。

悲しい歴史として、対馬丸事件では、多くの犠牲者の遺体が焼内湾に流れ着き、「肉の海」と呼ばれることもありました。この出来事は、焼内湾の美しい風景とは対照的な、痛ましい過去を物語っています。

湾内や湾に流れ込む河内川は、希少種であるリュウキュウアユの回遊路となっており、生物多様性の宝庫です。また、湾口内外はザトウクジラやミナミハンドウイルカの回遊経路でもあり、これらの海洋哺乳類が姿を現すこともあります。

特筆すべきは、1997年に絶滅危惧種であるセミクジラが湾内で確認されたことです。南西諸島全体でも目撃例が非常に少なく、目視3例、漂着1例、捕獲1例の全てが奄美大島周辺で確認されています。このうち、焼内湾での目撃は、1955年の須子茂離沖以来、次は2014年の大和村沖での目撃となる貴重な記録です。

焼内湾は、美しい自然と豊かな生態系、歴史的な背景を持つ、非常に魅力的な場所です。その美しい風景と、そこで育まれる多様な生物の姿は、訪れる人々に感動を与え、後世にまで残すべき貴重な自然遺産です。

主な特徴

奄美大島西部に位置する湾
クロマグロ、真珠、クルマエビの養殖が盛ん
リュウキュウアユの回遊路
ザトウクジラ、ミナミハンドウイルカの回遊経路
絶滅危惧種セミクジラの目撃例
琉球王朝時代の重要な港
対馬丸事件の悲劇の場所
湯湾岳の麓に位置
* 奄美群島国立公園特別保護地区

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