熱川温泉

熱川温泉

静岡県賀茂郡東伊豆町に位置する熱川温泉は、伊豆半島の東海岸、相模灘に面した場所に広がる温泉地です。豊富な湯量と、約100℃という非常に高い源泉温度が最大の特徴で、温泉街のいたるところから白い湯煙が勢いよく立ち上る光景は、熱川温泉の代名詞となっています。

この地の泉質は塩化物泉です。高温の湯が湧き出す恵みを活かした施設として、最も有名なのが「熱川バナナワニ園」でしょう。このユニークな施設は、本園、ワニ園、分園の三つのエリアに分かれており、世界中の珍しいワニの仲間をはじめ、色とりどりの熱帯植物、そして愛らしいレッサーパンダなど、多様な生き物や植物を一度に見ることができます。園内では、温泉の熱を利用した温室で、バナナをはじめとする熱帯果樹やランなどの植物が栽培されており、また、ワニやレッサーパンダなどの動物たちも、熱帯環境に近い状態で飼育されています。

海沿いの狭地に山が迫る地形に位置する温泉街には、現在19軒ほどの旅館やホテルが営業しています。高所にある源泉井からは常に高温の湯気が立ち上り、まるで雲に包まれたかのような幻想的な温泉情緒を醸し出しています。

滞在中の楽しみとしては、温泉施設のほかにも様々な選択肢があります。海岸線には、潮騒を聞きながら入浴できる露天風呂「高磯の湯」が整備されています。夏季には隣接するプールもオープンし、温泉とレジャーの両方を楽しむことができます。また、手軽に温泉気分を味わえる足湯施設も充実しています。伊豆熱川駅のすぐ前には「熱川湯の華ぱあーく」が、そして海岸沿いには「熱川ほっとぱあーく」があり、いずれも無料で利用可能です。散策の休憩や電車の待ち時間に気軽に立ち寄ることができます。

熱川温泉には古くからの開湯伝説が伝わっています。戦国時代の武将である太田道灌が、川底から湧き出る温泉で傷を癒している猿を見かけたことから発見されたと語られています。近代に入ってからは観光地として発展しましたが、幾つかの試練も経験しました。1969年には温泉旅館での火災事故が発生し、尊い命が失われました。また、1978年の伊豆大島近海の地震では、温泉街の建物にも大きな被害が生じ、犠牲者も出ました。これらの困難を乗り越え、熱川温泉は今日も多くの観光客を迎えています。

温泉地としての魅力に加え、周辺には観光スポットも点在しています。「お湯かけ弁財天」は、湧き出す温泉をかけて願い事をするというユニークなパワースポットです。夏に開設される「熱川YOU湯ビーチ」は、東伊豆町内で唯一の砂浜を持つ海水浴場で、多くの人で賑わいます。7月にはここを会場に花火大会も開催され、夜空を彩る光の祭典を楽しむことができます。「熱川ハーブテラス」では、様々な種類のハーブに囲まれ、香りを楽しみながらリラックスした時間を過ごすことができます。

交通アクセスについても良好です。鉄道を利用する場合、伊豆急行線の伊豆熱川駅が最寄りの駅となり、駅を出るとすぐに温泉街が広がっています。東京方面からは、特急「踊り子号」や新型特急「サフィール踊り子号」が伊豆熱川駅に停車するため、乗り換えなしでアクセスできます。東京駅からは特急で概ね2時間10分から2時間30分程度で到着します。自動車を利用する場合は、小田原西インターチェンジなどを経由して国道135号線を利用するのが一般的です。

約100℃の高温源泉が生み出す湯煙の景観、熱帯の動植物に出会えるバナナワニ園、そして太平洋を望む海岸線など、熱川温泉はその個性豊かな魅力で、訪れる人々に心身のリフレッシュと楽しい発見を提供し続けています。

もう一度検索