伊豆急行線

伊豆急行線：伊豆の海岸線を彩る鉄路

伊豆急行線は、静岡県の伊東駅から伊豆急下田駅を結ぶ、伊豆急行が運営する全長45.7kmの鉄道路線です。伊豆半島の東海岸に沿って走り、風光明媚な景色と温泉地へのアクセスを提供し、観光客に人気の路線となっています。

概要

1961年12月10日に全線が開業しました。路線の約半分は海岸線に沿っていますが、伊豆半島特有の地形のため、実際には海が見える区間は限られています。路線の38%がトンネル（全31本、総延長17.8km）で、トンネルがない区間は城ヶ崎海岸駅 - 伊豆高原駅間のみです。

建設時には、温泉地特有の地盤に苦労し、トンネル掘削中に源泉が湧き出して落盤事故が多発し、多くの建設作業員が犠牲になりました。また、西武系の企業に海岸沿いの土地を押さえられた影響で、河津駅 - 伊豆急下田駅間ではルートを変更せざるを得なかったという歴史的背景もあります。

景観

川奈駅 - 富戸駅間では、海抜100m超の高さから海を見下ろす絶景が楽しめます。眼下には川奈岬や川奈ホテルゴルフコースが広がり、開放的な景色が広がります。また、片瀬白田駅 - 伊豆稲取駅間は、波打ち際近くを走る区間として知られ、「リゾート21」に乗車すると、視界いっぱいに海が広がります。

利便性

2010年3月13日には全線でICカード「Suica」が導入され、PASMOなどの相互利用可能なICカードも利用できます。伊東駅を除く全ての駅に自動改札機はありませんが、Suica導入に伴い、南伊東駅からの各駅にICカード用の簡易改札機が設置されています。特急停車駅では、新幹線を含む指定席特急券やJRの遠距離乗車券も購入可能です。

無人化

2012年4月1日以降、伊豆北川駅と稲梓駅は終日無人駅となり、窓口や券売機が撤去されました。その後、2015年に伊豆大川駅、2021年には富戸駅、城ヶ崎海岸駅、片瀬白田駅、今井浜海岸駅、蓮台寺駅も無人化されています。無人駅では、緊急連絡用の電話機が設置されています。

安全対策

近年、踏切の非常ボタンがJR東日本と同タイプのものに交換されています。特殊発光信号機は伊豆急行独自のデザインのものが使用され、落石警報には一般的な五角形のものが使用されています。また、2017年からはATS-SiからATS-Pへの更新工事が順次進められています。

運行形態

開業当時から、優等列車の多くは伊東駅でJR東日本の伊東線と直通運転を行っています。普通列車も、朝晩は伊東駅での折り返し運転が多いですが、日中は熱海駅まで直通する列車も多くあります。かつては普通列車にもグリーン車が連結されていましたが、現在は連結されていません。普通列車の運行本数は昼間時間帯で1時間に2本程度で、伊豆高原駅以南では3両編成で運転されることがあります。

観光シーズンには、特急列車の増発や臨時の快速列車が運転されます。2017年7月21日からは、横浜駅 - 伊豆急下田駅間で「THE ROYAL EXPRESS」が運行されています。

ワンマン運転

早朝・夜間および日中の伊豆高原駅以南の一部普通列車では、8000系を使用したワンマン運転が行われています。ただし、運転士以外にもう1人乗務員が乗務し、乗車券の発券や集札を担当します。

お召し列車

下田に須崎御用邸があるため、私鉄では珍しくお召し列車や御乗用列車が乗り入れます。

使用車両

現在の使用車両は、自社車両の2100系、3000系、8000系と、JR東日本からの乗り入れ車両であるE257系、E261系です。過去には、100系、1000系、200系などの自社車両や、東急電鉄からの借用車両も使用されていました。

伊豆急行線は、伊豆の美しい自然と温泉地を結ぶ、魅力的な鉄道路線です。ぜひ一度、その車窓からの景色を堪能してみてください。

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