牧之島城

牧之島城（まきのしまじょう）

概要

牧之島城は、長野県長野市信州新町牧野島に位置する日本の城です。かつては牧城（まきじょう）という名称で知られていました。現在、長野県の史跡に指定されており、その歴史的な価値を今に伝えています。

牧城の歴史

築城年は明確ではありませんが、鎌倉時代にこの地を領有していた香坂氏によって築かれたとされています。香坂氏の6代目である香坂心覚や、越後の上杉兵庫助（上杉氏）が、建武3年（1336年）に南朝方として挙兵し、村上氏や高梨氏などの北信濃の北朝方と激戦を繰り広げました。

戦国時代に入ると、当主の香坂宗重は武田信玄に臣従し、無血開城しました。弘治2年（1556年）には、信玄の命により埴科郡へ移り、代わりに馬場信春が牧城に入城しました。

牧之島城の成立

永禄9年（1566年）または永禄4年（1561年）に、武田信玄は牧城の一部を改修し、新たに牧之島城を築かせ、馬場信春を城代としました。天正3年（1575年）5月21日、信春が長篠の戦いで戦死した後、その子である馬場昌房（民部少輔）が城代を引き継ぎました。また、上尾城主の平林正恒も武田勝頼の命で在城しました。

その後の変遷

天正10年（1582年）2月、織田氏の信濃侵攻の際、昌房は深志城（現在の長野県松本市）を織田長益に明け渡しました。その後、昌房は織田氏によって処刑されたとも、戦死したとも伝えられています。武田氏滅亡後、同年6月に本能寺の変が発生し、天正壬午の乱が起こると、牧之島城は越後国の上杉景勝の支配下に入り、深志城の小笠原貞慶に対抗するため、7月26日に芋川親正が城主となりました。

慶長3年（1598年）に景勝が会津に移封された後は、海津城主の田丸直昌や森忠政、松平忠輝らの属城となりました。

元和2年（1616年）、忠輝が改易されるとともに、牧之島城も廃城となりました。

現在の牧之島城

現在、牧之島城跡には堀跡や土塁跡が残り、特に千人枡形（隠れ枡形）や三日月堀、丸馬出しなど、甲州流築城術の特徴を今に伝えています。付近には小規模ながら町並みが残り、近世大名の城下町の原初的な姿を見ることができます。

1966年（昭和41年）に県史跡に指定され、その後10年をかけて公園として大規模に整備されました。また、普光寺の前には牧城跡の石碑が残っており、香坂氏の居館跡であったことを示しています。

参考文献

南原公平 著『信州の城と古戦場』 しなのき書房 2009年
宮坂武男 著『図説 日本の城郭シリーズ③ 宮坂武男と歩く戦国信濃の城郭』 戒光祥出版 2016年
平山優 著 『天正壬午の乱 本能寺の変と東国戦国史 増補改訂版』 戒光祥出版 2015年

関連項目

斎部城跡
* 日本の城一覧

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