田丸直昌

田丸直昌とは

田丸直昌（たまる なおまさ）は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将・大名です。伊勢国司・北畠氏の庶流である田丸氏の出身で、激動の時代を生き抜きました。

生涯

田丸氏は、北畠政郷の四男・顕晴が度会郡田丸城に入り、田丸氏を名乗ったのが始まりです。直昌は天文12年（1543年）に田丸具忠の子として誕生しました。

父・具忠の隠居に伴い家督を継いだ直昌は、織田信長の伊勢侵攻後、田丸城を明け渡して織田信雄に仕えました。天正2年（1574年）には、信雄配下の武将として水軍を率いて第三次伊勢長島攻めに参戦しています。さらに天正4年（1576年）には、信長の意向を受けた信雄の命により、長野具藤・北畠親成ら北畠一門の有力者を田丸城に招き、殺害するという事件（三瀬の変）を起こしています。

本能寺の変後も信雄に属していましたが、信雄と羽柴秀吉が対立し始めると秀吉に接近。小牧・長久手の戦いでは、蒲生氏の家臣として従軍しました。戦後、蒲生氏郷の妹婿であったことから、蒲生氏の与力大名となり、氏郷が会津に転封されると、直昌は須賀川城主として3万石を与えられました。同じく与力大名で氏郷の妹婿である関一政とともに、蒲生氏を支える重要な存在となりました。その後、三春城5万2,000石に加増されましたが、後に守山城に移されています。

氏郷が死去すると、その子・秀行に従い、秀行が宇都宮に転封されると、直昌は秀吉に仕え、信濃国川中島の海津城主に封ぜられました。慶長元年（1596年）には豊臣姓を与えられ、叙任されています。

慶長5年（1600年）には徳川家康の命で森忠政と交換人事が行われ、美濃国岩村城4万石に移りました。直昌の所領は美濃国恵那郡、土岐郡、可児郡に及び、可児郡の虎渓山永保寺に寺領安堵状を下しています。

関ヶ原の戦いでは、直昌は西軍に与しました。小山会議で諸将が東軍に味方する中、ただ一人秀吉の恩顧を思い西軍に付くことを決意したという逸話がありますが、実際には直昌は小山会議には参加しておらず、この逸話は創作であると言われています。

岩村城は城代田丸主水に任せ、自身は大坂城の守備に赴きました。しかし、関ヶ原の戦いで西軍が大敗したことが岩村城代の田丸主水に伝わると、東軍の遠山友政は岩村城の開城を促します。主水は、開城を承諾する代わりに、遠山友政に会見を求め、最終的には家伝の長刀を渡し、夜に紛れて城を去りました。

戦後、直昌は助命されたものの改易となり、越後国へ流罪となりました。その後、名立寺の忠山泉恕に帰依して出家し、慶長10年（1605年）に越後福島城下小町川のほとりに太岩寺を建立しました。

慶長14年（1609年）、越後で没しました。享年67歳。直昌が建立した太岩寺は、後に越後高田城下に移され、現在も境内に直昌の墓所があります。

嫡男の直茂は赦免され、加賀藩の前田利常に仕えました。直茂の子・定重は町医者から幕府の鍼科医となり、その子孫も代々鍼科医を務めました。

人物

田丸直昌は、戦国時代の激動の中で、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康と主君を次々と変えながらも、それぞれの時代で重要な役割を果たしました。特に蒲生氏との関係が深く、蒲生氏を支える有力な大名として活躍しました。関ヶ原の戦いでは西軍に与したため、その後の人生は不遇でしたが、出家後も寺を建立するなど、その人生は波乱に満ちていました。

関連事項

岩村藩
田丸稲之衛門（子孫、幕末の水戸天狗党の首領）

出典

藤田達生『蒲生氏郷 -おもひきや人の行方ぞ定めなき-』（ミネルヴァ書房、2012年）
田丸辻郎『戦国武将岩村城主田丸直昌と北畠・田丸氏の歴史。』（岩村町歴史資料館、1996年）

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