牧港住宅地区

牧港住宅地区とは

牧港住宅地区は、かつて沖縄県那覇市北部に存在した米軍基地（FAC6061）です。沖縄戦の激戦地であったシュガーローフの戦いの舞台となり、戦後、米軍に占領されました。1953年には米国民政府によって強制的に接収され、米軍関係者の住宅地として利用されましたが、1987年に全面返還され、現在は那覇新都心（おもろまち）として再開発されています。浦添市にある牧港補給地区（キャンプ・キンザー）とは異なる場所であることに注意が必要です。

概要

1953年、島尻郡真和志村（現在の那覇市）の天久、銘苅、上之屋の一帯が米軍に強制接収され、約195ヘクタールという広大な牧港住宅地区が建設されました。この地区には、米陸軍と空軍の家族住宅、シュリヒルズクラブ、ゴルフ場、プール、スケート場、PX（基地内の日用品店）、小学校などの関連施設が設けられ、約3,000人の軍人・軍属が居住していました。

場所: 那覇市上之屋、天久、安謝、銘苅、安里、真嘉比、小島・おもろまち
面積: 約1,968,000平方メートル

歴史

沖縄戦と占領

1945年、沖縄戦の結果、米軍がこの地を占領しました。特に、この地域はシュガーローフの戦いという激戦地となり、住民の多くが犠牲となりました。生き残った住民は収容所に送られ、天久地域の住民は1947年頃まで帰村が許可されませんでした。

強制接収と住宅地化

1952年10月、米国民政府は銘苅、安謝、天久の集落を明け渡すよう通告しましたが、立法院はこれを認めませんでした。しかし、1953年4月、米民政府は土地収用令を公布し、強制的に土地を接収しました。この際、米軍の武装兵に警護されたブルドーザーが土地を次々と接収する様子は、「銃剣とブルドーザー」と呼ばれ、戦後の米軍による土地強制接収の象徴となりました。

返還と再開発

1973年から1974年にかけて、日米安全保障委員会は、住宅地区を嘉手納基地や牧港補給基地、キャンプ・コートニーへ代替移設することを条件に返還することに合意しました。1977年には陸軍から空軍へ管理が移管され、1975年から1987年にかけて6回に分けて段階的に返還されました。1987年に全面返還が実現し、その後、独立行政法人都市再生機構（当時、地域振興整備公団）によって那覇新都心地区土地区画整理事業が進められました。

返還と跡地開発の遅れ

細切れ返還

1975年から1987年までの13年間で6回に分けて細切れに返還されたため、開発がスムーズに進まず、長期間を要しました。返還された区画は米軍基地のフェンスが残されたままの状態であり、地元住民からは「解放区」と呼ばれていました。また、不発弾の処理や埋蔵文化財に関する調査も1990年になってから開始されました。

困難な土地整備

沖縄戦の激戦地であったこの地域は、土地整備に多くの困難を伴いました。2006年には、日本銀行那覇支店の移設予定地造成中に大量の不発弾が発見され、ロケット弾や迫撃砲弾、艦砲弾など合計140発が回収されました。那覇市は県内で最も不発弾の多い場所となっています。また、遺骨収集も長らく行われず、米軍に強制接収されてから半世紀以上が経過していたため、工事現場では遺骨が土嚢袋にまとめられるなど、遺骨収集がさらに困難になりました。2009年から2010年にかけて、那覇市や厚生労働省が遺骨収集事業を実施し、132人の遺骨が収集されました。

那覇新都心の誕生

返還された跡地は、那覇市の新たな都市拠点として那覇新都心地区となり、土地区画整理事業が実施されました。この地区には、那覇市新都心銘苅庁舎や沖縄職業総合庁舎、沖縄県立博物館・美術館などの公共施設、大型ショッピングセンター「DFSギャラリア・沖縄」、大型公園「新都心公園」、映画館などの商業施設、アパートやマンションなどの住宅施設が多数建設されました。2014年の時点で、住居人口は2万人に達しています。

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