牧野巽

牧野巽（まきの たつみ）

牧野巽（1905年2月10日 - 1974年11月3日）は、日本の著名な社会学者であり、東京大学の名誉教授でした。彼は特に中国の家族制度に関する研究で高い評価を受けています。

経歴

出生から修学期

1905年、漢学者である牧野謙次郎の長男として東京に生まれました。東京帝国大学文学部に入学し、社会学科で戸田貞三に師事しました。同門には清水幾太郎がおり、牧野は清水を弟のように、清水は牧野を兄のように慕っていました。1929年に東京帝国大学を卒業しました。

社会学研究者として

1929年4月、母校である東京帝国大学社会学研究室の副手に就任し（1930年4月まで）、翌1930年には東方文化学院研究所の所員となりました。その後、東京高等師範学校で教鞭をとりました。

戦後

1947年、東京帝国大学に論文『儀礼及び礼記に於ける家族と宗教』を提出し、文学博士号を取得しました。1949年には東京大学教育学部の教授となり、教育社会学を担当しました。竹内洋によると、当時の東大教育学部は左翼的な思想が強かったとされています。1954年の「教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」、1958年の警察官職務執行法改正、1960年の日米安全保障条約改定の際には、教授会名で反対声明を出すことが提案されましたが、長老教授からの異論があり、有志による反対声明に切り替えられました。竹内は、その異論を唱えた長老教授が牧野巽であったと指摘しています。また、竹内によれば、牧野の教え子であり、教育社会学講座の助手であった潮木守一は、教授会声明が教授会有志の声明になったのは牧野のせいだと嫌味を言われたそうです。1965年に東京大学を定年退官し、名誉教授となりました。

退官後は大阪大学教授、1968年からは早稲田大学教授として教鞭を執りました。1974年に逝去し、墓所は染井霊園にあります。

研究内容・業績

牧野巽は、家族・親族に関する研究で多大な業績を残しました。特に中国の家族制度に焦点を当てた研究は、社会学界に大きな影響を与えました。

家族・親族

父：牧野謙次郎は漢学者であり、早稲田大学の教授を務めていました。

著作

著書

『牧野巽著作集』(全7巻) 御茶の水書房　1979-1985

共編著

『社会学概論』岡田謙共著、金子書房 1948
『現代社会学』編、誠信書房 1957

訳書

『社会学入門』セレスタン・ブーグレ著、本田喜代治共訳、刀江書院 1929
『シャン民俗誌』マリ・ルイーズ・ミルン著、佐藤利子共訳、生活社 1944

回想

『東方学回想 Ⅸ　先学を語る 6』刀水書房 2000 - 弟子等の座談での回想

参考文献

竹内洋『革新幻想の戦後史』中央公論新社、2011年。ISBN 9784120043000。
牧野巽『デジタル版 日本人名大辞典+Plus』 - コトバンク

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