牧野英一

牧野 英一の生涯と業績

概要

牧野英一（まきの えいいち、1878年3月20日 - 1970年4月18日）は、日本の著名な法学者であり、特に刑事法の分野で顕著な業績を残しました。法学博士の学位を持ち、東京帝国大学の名誉[[教授]]や東京商科大学の名誉講師を務めました。彼は、穂積陳重の弟子として知られ、数多くの優れた学生を指導しました。

生い立ち

岐阜県大野郡で旅館主の家に生まれた牧野は、岐阜県立斐太中学校を経て、第一高等学校、さらに東京帝国大学法科大学に進学しました。在学中には、法律進化論や自然法、比較法について学び、特に穂積陳重からの影響を受けました。1903年に卒業後、ドイツ、イギリス、イタリアへの留学を経て1913年に帰国し、1914年には法学博士の学位を取得しました。

職歴

牧野は東京帝国大学にて講師としてキャリアを始め、その後は判事や検事を経験しました。1907年には同大学法科において助[[教授]]に就任し、1913年に教授に昇進しました。また、九州帝国大学や法政大学、中央大学、海軍経理学校などでも教鞭を執り、法律教育に大きな影響を与えました。1946年には帝国議会の貴族院議員に選出され、憲法改正にも関与しました。

学問的業績

牧野の研究は主に刑法に関するもので、特に新的な刑法学の視点から評価されています。主著である『日本刑法』においては、犯罪を社会の病として捉え、刑罰の主な目的は犯罪人の反社会的性格を矯正することだと主張しました。彼はリストやフェリーの議論を基に、目的刑論に則り、刑罰の適正な運用について論じました。彼の理論は、特に執行猶予の積極的活用や、再社会化のための教育的アプローチに重点を置いています。

その学説はまた、信義誠実の原則や公序良俗に関する研究でも知られ、作為義務や不作為の違法性についても考察を重ねています。1913年から1943年まで東京高等商業学校で教えた際には、彼の教育方針が学生たちに強く影響し、多くの優れた法学者が育成されました。

公職活動

牧野は法制局参事官や法制審議会委員など、さまざまな公職にも関与しました。特に、1946年に日本国憲法の改正に携わり、家父長制を守るための考え方を提唱しました。彼は、法律が現実社会に適合するよう改正されるべきだとしながらも、旧来の家制度の完全な撤廃には慎重な立場を取っていました。これにより、彼は学界の間でも強い意見の対立を引き起こしました。

栄誉

牧野はその業績に対して数々の栄典を受けており、1950年には文化勲章を受章しました。その後も、勲一等瑞宝章や名誉市民の称号を得るなど、その影響力は長年にわたり続きました。

人物・特徴

非常に優れた語学能力を持ち、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語など七か国語を自在に扱ったことで「語学の神様」と称されています。また、和歌の愛好者でもあり、教養のある法思想家としても名を馳せました。彼の思想は、戦後の保守的な立場から見られる一方で、社会主義への理解も示すなど複雑な側面を持っていました。

おわりに

牧野英一は、その広範な学問と公共における活動を通じて、日本の法学界に多大な影響を与えました。彼の理論は今もなお現代の法律制度に影響を与え続けており、刑法学の重要な基盤の一部として位置づけられています。

もう一度検索