物産会

物産会の概要

物産会（ぶっさんえ、ぶっさんかい）は、日本の江戸時代後期から明治時代にかけて行われた催し物であり、博覧会や博物館の原型ともいえる重要なイベントです。各地の産物、特に舶来品が集合する展覧会が特徴で、江戸、大坂、京都、名古屋といった都市で開催されました。物産会は時として「薬品会」や「本草会」とも呼ばれ、その名の通り薬学や本草学に基づく知識の交流が主な目的でした。

会の目的と特徴

物産会は、主に本草学者や蘭学者、儒医、薬種商といった専門家が情報を交換する場として機能しました。しかし、一般の庶民にも開放されることがあり、珍しい展示品によって見世物的な側面も持っていました。展示品は主に薬草や薬材が中心でしたが、古銭や鉱物なども薬材とみなされ、これらの収集家たちも参加しました。特に、江戸時代を代表する珍品収集家の木村蒹葭堂や、奇石収集家の木内石亭が出品した事例も残っています。

また、物産会自体が発展する過程で、奇石収集家や古物収集家が似たような催しを開くこともありました。こうした同好会的な活動は、江戸後期から広まった傾向であり、多くの分野において見受けられました。

歴史的背景

物産会が生まれた背景には、日本の本草学が『本草綱目』などの文献研究から実物研究へとシフトしていった流れや、薬材を含む有用な産物を研究する「物産学」の発展があります。特に、徳川吉宗の「享保の改革」による殖産興業政策が後押ししたことも大きいでしょう。また、1757年に田村藍水が江戸で開催した「東都薬品会」が最初の物産会とされ、約180点の出品があったことから、物産会の歴史が始まりました。主催者である藍水の弟子、平賀源内がこの会を発起したことが特筆されます。

その後、「東都薬品会」は回を重ね、1760年には大坂、1761年には京都においても物産会が開催され、江戸と上方の間で影響を及ぼし合いました。1762年には、さらに大規模な物産会が開催され、日本各地から約1300点の出品が集まりました。このように、物産会は各地域で次々と開催され、重要な交流の場へと成長しました。

明治時代への移行

明治末期に至るまで物産会は存続しました。その中で特に注目されるのは、1871年に東京府の九段で開催された「大学南校物産会」で、これは西洋式の博覧会の導入へ向けた試みでもありました。この会では約2300点の官民からの出品があり、博物標本や歴史的遺物、機械、絵画などが展示されました。「大学南校物産会」の開催後も、「湯島聖堂博覧会」や「ウィーン万博日本館」などが続々と企画され、物産会は新たな形へと進化していきました。

文献参考

物産会に関する資料としては、平賀源内の著作や、戸田旭山、豊田養慶の作品などが存在し、多くの出品目録が残されています。これらの資料は当時の研究や文化の発展を知る貴重な手がかりとなっています。物産会が持つ多面的な特性や、その歴史的意義は、現代の博覧会や博物館の成立に大きな影響を与えた重要な出来事でした。

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